ASIBA
Project NESS
INC-PJProject

Project NESS

# AI-technology# urban-development# democratic-design# innovation# community-engagement
Duration2023-
StatusActive
Project LeaderNozomu Sudo
Project MemberMasaki Morihara

concept

コンヴィヴィアルな画像生成AIをめざして

Project NESSは、画像生成AIを用いた都市の新たな「つくられかた」を模索するプロジェクトチームである。2023年のASIBA Incubation 1st Programから生まれ、現在はASIBA PROJECT LABELとして活動を展開する。画像生成AIをコンヴィヴィアルな道具と見立て、市民の主体的な参加や意志データの獲得、合意形成を可能にするワークショップやプロダクトを開発。「地域らしさ」の抽出・構築から、画像生成を基点としたまちづくり議論まで、実践・研究・アートを横断しながら新たな方法論を模索している。

まちづくりや地域愛着、景観アーカイブの文脈において、AIはどう活用されるべきなのか。NESSが一貫して問い続けているのはこの問いである。

出発点にあるのは、トップダウンとボトムアップの非対称性への違和感だ。大規模開発や建築家による計画は、明確なビジョンと実行力を持つ一方で、そこに暮らす人々の記憶や愛着、日常の感覚を掬い取ることが構造的に難しい。市民参加の仕組みは整備されつつあるが、本来的な機能発揮が十分とは言えず、トップダウン/ボトムアップ双方のデザインプロセスが課題を抱えている。

NESSはこの構造に対して、画像生成AIを「コンヴィヴィアルな道具」——イヴァン・イリイチが提唱した、使う人の自律性を奪わない道具という概念——として位置づける。テキストを入力するだけで「未来の写真」を生成できるAIの特性を活かし、専門知識を持たない市民でも自らの理想とする街の姿を具体的なヴィジュアルとして表現できる仕組みをつくる。加速する技術・経済至上主義に対するオルタナティブなAIの利用方法を、地域の現場から模索するプロジェクトである。

京島地域のマテリアル


kyojima

京島 —「地域らしさ」の抽出と再構築

NESSの原点は、墨田区京島をフィールドとした「京島LoRAプロジェクト」にある。関東大震災や東京大空襲、バブルの開発からも逃れた京島には、木造建築の伝統がいまだに息づいている。住民たちは自治的にDIYによる改修を行い、コモンズ的な協働意識をもって長屋をケアしながら住み繋いできた。しかし近年、宅地開発や防災対策により、この伝統コミュニティに危機が迫っている。

NESSは、画像生成AI「Stable Diffusion」のLoRA(追加学習)機能を用いて、京島の原風景から「京島っぽさ」を抽出した。植木鉢、溢れ出す植物、狭い路地、トタンの壁、瓦の屋根、低層の木造住宅——現地で撮影した写真をAIに学習させることで、「京島っぽさ」という非言語的な概念を生成する。この曖昧な概念の集合は、住民たちが抱く集合的な記憶として捉えることができないか。そして、AIによって形成された集合的記憶を、住民のための新たなデザインツールとして活用できないか。大規模開発や建築家のようなトップダウンの手法とは対極にある、ボトムアップでオープンソースな計画方法の提案である。

生成画像(京島LoRAを用いて)
生成画像(京島LoRAを用いて)


sumida

すみだ向島EXPO

2023年10月、地域芸術祭「すみだ向島EXPO」に1日限定で出展。京島LoRAプロジェクトの展示を、現役の銭湯「電気湯」の脱衣所で行った。

ここでは2つの実験が行われた。ひとつは、生成画像の模型化である。AIが生成した2D画像を3Dに立ち上げる過程で、8人のメンバーがそれぞれ別の時間帯・別の箇所を即興的に制作していく「多視点性」と「即興性」を重視した手法を試みた。一枚の計画図から構築されたのではなく、自然発生的・ボトムアップに形成されてきた京島の街並みそのものを模型制作のプロセスに写し取る試みである。

もうひとつは、住民による生成画像の評価だ。地域住民、参加アーティスト、EXPO運営など、さまざまな立場で京島と関わる人々に生成画像を見てもらい、「京島らしい・らしくない」「好き」「あったらいい」といった反応を収集した。興味深かったのは、ガラスの家具や派手なアトリエなど、実際の京島にはない要素が京島に置かれた画像に高評価が集まったことである。地域らしさをベースに「らしくない」写真を生成できるという画像生成AIの特性は、新たな地域像を構想するうえで大きな強みとなることが確認された。


akabane

赤羽 — 駅前商店街の行く末を描いてみる

赤羽でもワークショップを行った。駅前商店街やその近辺一帯の進行中の再開発に対し、住民や議員による反対活動が見られるエリアである。

ここでは、建築やまちづくりにおけるコミュニケーションツールとしての画像生成AIの可能性を模索した。赤羽の3つエリアを歩き、写真撮影や感想の言語化、歴史の共有などを行ったあと、赤羽の未来の姿や赤羽らしさ、再開発の在り方などについて、画像生成を起点とした議論を行った。漠然と想像していたイメージが可視化され、テキストで説明するよりも伝わりやすい議論となった。画像生成AIは高齢者でも簡単に扱え、地域文脈に沿って主体的な提案・議論を促すツールであることがわかった。

赤羽での実践は、住民が自らの街の未来を主体的に考える「自律=自治的デザイン」(エスコバル 2024)の試みといえる。重要なのは、AIが住民の主体性を奪うのではなく拡張していることである。AIを「みんなのデザイン」を支援する道具として位置づけ直すとき、フィールドワークは地域の自律性を高める手段となりうる。


with asiba

参加型まちづくりの新たなメディウムを考える

NESSの方法論は、ASIBA主催の複数のプロジェクトにおいても応用されている。画像生成AIやAIを触媒とした市民参加型のアプローチが、さまざまな地域・文脈で展開されてきた。

中野駅南口社会実験
中野区行政と連携し、駅前の新たな風景を市民と共に構想する実験。NESSが開発した画像生成AIツールを用いて、通りがかりの人々が自由に風景を生成する。アレグザンダーの時代から続く参加型まちづくりの手法が、生成AI時代にどのように更新されるかを問うた。

水道道路AIワークショップ(Tokyo Futurescape Studio #02)
渋谷区ササハタハツエリアにて、「記憶のカメラ」とラジオ台本生成AIを用いた参加型WSを実施。NESSのコンセプトである「AIを人間の創造性の触媒として活用する」アプローチを、コミュニティラジオという形式に展開した。