ASIBA
あなたとわたしのあいだの景色
STUDIOEvent

あなたとわたしのあいだの景色

# community-workshop# memory-camera# participatory-design# future-radio# shibuya# co-creation
Duration2025.07
StatusCompleted
PMHiroumi Takano
Workshop OrganizerRintaro Chujo
Project MemberHaruna Sano

concept

街の記憶を集めるメディアとしてのAI

渋谷区ササハタハツエリアの水道道路沿道にて、街の記憶を集め、AIを触媒として2040年のコミュニティラジオを制作する参加型ワークショップを開催した。東京大学大学院の中條麟太郎氏をコラボレーターに迎え、写真と音声を同時に記録する「記憶のカメラ」やラジオ台本生成AIといった独自ツールを開発。学生や地元住民ら計21名が参加し、地図やデータには現れない街の主観的な記憶を収集・編集しながら、未来の都市像を語り合った。

効率性や経済合理性を前提とした都市計画の枠組みからは、住民一人ひとりの記憶や感情といった「声なき声」がこぼれ落ちてしまう。渋谷区北部を東西に貫く水道道路にも、地図や統計には現れない日常の感情や思い出が根付き、地域の風景を形作ってきた。本企画は、東京の50年後・100年後の風景を探索的に描き出す「Tokyo Futurescape Studio」シリーズの第2回として、AIをはじめとするテクノロジーが多様な声をつなぎ合わせる新しい媒体になり得るかを問う。


tools

集めるためのAI、想像するためのAI

本ワークショップでは、人間の創造性を引き出すAIの在り方を探るため、2つのツールを新たに開発した。

記憶のカメラ
写真撮影後に自動で30秒間の音声を録音し、写真と音声をセットで保存できるアプリケーション。街を歩きながら好きな場所や瞬間を語り合い、その声ごと記録として残すことができる。収集された記憶は、付箋サイズの紙に写真と音声テキストが印刷され、マップ上にマッピングされていく。

ラジオ台本生成AI
テーマや街歩きでの写真をもとに、AIがラジオ番組のような台本の下書きを生成するシステム。「どうすれば、2040年にもっと〇〇なまちになるでしょうか?」という問いかけをベースに、参加者がDJ名を決めて番組に参加する。AIが生成する台本はあくまで叩き台であり、参加者はそれに加筆修正を加えながら自分たちの言葉を紡いでいく。


workshop phase 1

1. 街歩き — 街の記憶をパシャリ

笹塚エリア・幡ヶ谷エリアの二手に分かれ、グループごとに水道道路を歩いた。参加者は記憶のカメラを手に、普段見落としていた風景に目を向けながら、暮らしの中に根付いた記憶を語り合う。「この角を曲がるといい匂いがした」「昔ここには〇〇があった」——収集されたのは、街に息づく個人的な語りの断片である。

街歩き後、収集した記憶は写真と音声テキストがセットになったカードとして印刷され、地図上に配置された。各地点での気づきをチーム内で言語化しながら共有し、ササハタハツエリアの街の総体を捉え直す作業を行った。


workshop phase 2

2. 2040年のコミュニティラジオ制作

各グループは「どうすれば、2040年にもっと〇〇なまちになるか?」という問いに沿って、街歩きでの気づきをもとにラジオのテーマを設定した。「個性を発揮できるまち」「自分で育てられるまち」など、グループごとに多様なテーマが挙がる。AIにテーマを入力して生成された台本を叩き台に、参加者は自分たちの言葉で加筆修正を重ね、未来の水道道路を語るオリジナルのラジオ番組を作り上げていった。


workshop phase 3

3. コミュニティラジオ発表会

完成したラジオ台本をもとに、参加者はDJになりきって発表を行った。演出のひとつとして、渋谷区役所の未来まちづくり担当者に電話をつないで質問するという想定で進行。実際に会場に来ていたササハタハツまちラボの区役所職員からリアルタイムに返答がなされ、参加者は想像だけにとどまらず、行政の視点や制約も意識しながら議論を深めることができた。自分たちの声と現実の課題が交わる、臨場感のあるラジオ番組体験が生まれた。

DJ:こんにちは、みなさん!今日は2040年の渋谷区・水道道路から、“自分で育てられる水道道路”をみんなで話し合いますよ。昔ののんびりした雰囲気も懐かしいですが、今は人も植物も、それぞれ自由に根を伸ばしてる感じですよね。

さて今日はスペシャルゲストとして、ササハタさん、ハツダイさんにお電話でつないでまーす!お二人とも、よろしくお願いします!まずは、ササハタさんから未来のお便りが届いてます。そのままササハタさん、読んでもらえます?

ササハタ: 今日、水道道路の共育ちスポットで、通りすがりの人と一緒に「自分が世話したい花」を土に“記憶”させて育てる体験をしてきたんですよ。昔みたいに区画された花壇じゃなく、誰でも通っただけで土に思いや願いが残るんです。気付けば、小さな想いがつながって一年中いろんな花が“地域全体で勝手に”芽を出して、育ち合ってるんですよね。いやー、自分も自然も一緒に進化してる感じがして、すごく面白い時代だなって思いました!

DJ: いいですねー、昔のラジオ体操みたいな花壇じゃなくなったんだ! あの、2025年頃の水道道路の写真を私も見てるんですけど、なんかレンガが無造作に置いてあって、「このレンガたちは何なんだろう」って住民の人が言ってたり、“みんなの庭”が完全に未完成のまま置き去りにされてたり。今の、誰でもいつでも土や植物とつながれる形、素敵ですよね。


今後は、記憶のカメラで収集された街の記憶や感性といった主観的情報をデジタルツイン上で再現し、まちづくりのシナリオ検証に活かすことを目指す。従来のデジタルツインが扱ってきた物理的・機能的データに加え、人々の経験や感情、文化的背景を取り込んだ「間主観的デジタルツイン(Intersubjective Digital Twin)」の構想である。住民一人ひとりが「都市の語り手」として参加できる、新たな公共圏の創造に向けた実践が続く。