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「すわるんば」から得た学びを、「ロボットフレンドリー」な建築・都市を描く研究へ|インタビュー#3 大本和尚|ASIBA
ASIBA Creative LeagueINC-2ND2期生インタビュー

「すわるんば」から得た学びを、「ロボットフレンドリー」な建築・都市を描く研究へ|インタビュー#3 大本和尚|ASIBA

 建築・都市・デザイン領域で新たな未来を描く若きクリエイティブアントレプレナーに、これまでの活動の原動力や、抱えてきた悩み、それらをどう乗り越えて1つのプロジェクトへ昇華させてきたのか、「軌跡」に迫る本企画。第3回はASIBAのインキュベーション2期生で、プロジェクト「すわるんば」の代表・大本和尚に話を聞いた。(聞き手=安部道裕)

大本和尚(おおもと・ともひさ) 2001年広島生まれ。大学では、建築情報研究室に所属し生成AI・深層学習・xR・デジファブ・プロジェクションマッピングなどの様々な分野で研究、実装に取り組む。ものづくりを通して社会を変えるプロダクト・ビジネスを作ることを目指す。

──「すわるんば」はどのようなプロジェクトなのでしょうか  すわるんばは、ロボット掃除機のように移動する椅子です。街や住居の中で座りたいと思った時には、基本的には自分で椅子を探す・持ってくる必要がありますが、そうではなく「椅子の方が寄ってきて座らせてくれる」ことを目指したプロジェクトです。

──ロボットのように動く椅子なのですね。大本さんはロボットなどに興味があるのですか  そうですね、子どもの頃から『攻殻機動隊』『AKIRA』『新世紀エヴァンゲリオン』といったSF作品に強くひかれていて、ロボットといった構造体が動いている世界観が好きでした。大学で建築を学び始めてからもそうで、1960年代から80年代ごろのSFチックな時代の建築が好みですね。特にアーキグラムのウォーキング・シティ、黒川紀章設計の中銀カプセルタワービルには強い衝撃を受けました。

 2作の影響から、学部4年次の卒業制作では「ネオメタボリズム」をテーマに、自由に組み替え可能で、ロボットが人々の要望に応じて部屋を増設していくような建物の設計を行いました。アーキグラムの世界観と、メタボリズムの哲学を、現代の技術・社会背景に合せてアップデートしようという試みです。

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──卒業制作の取り組みの後に生まれたのがすわるんばなのでしょうか。  大規模な建築も、部材を部屋単位で細かく分節して運べるようにすれば、メタボリズムは実現できるのかもしれないという仮説を持って、卒業制作では一連の仕組みやディテールまで検討しました。このまま机上の空論で終わらせたくないと思い、どうすれば実現できるのか、ASIBAのインキュベーションプログラムで考え始めましたが、やはり、いざ実現しようとするとスケールが大きすぎるというのが正直なところでした。

 大規模な建築を実際に動かすのは難しいので、まずは身近な家具を動かしてみよう、そうして生まれたのが「すわるんば」です。

実証実験でハッとさせられた「当事者が街に出ていない状況」

──すわるんばは単に動くだけでなく「椅子の方が寄ってきてくれる」ものだと思いますが、どのような問題意識からこの発想は生まれたのでしょうか。  きっかけは父親でした。私の父は車椅子を使うほどでもないのですが、立っているとふらついてしまい、杖などの補助器具が必要になるレベルの障がいを持っています。歩いたりするのが大変そうな父の姿を見ていて、どこでも・いつでも座れるようなものがあれば良いな、と思ったのがすわるんばを開発した動機です。  そういう視点で都市を見てみると、街には座れる場所がかなり限られているということに気付きました。車社会の田舎では特にそうで、座れる場所は店舗しかない、という状況もありえます。そういう町に椅子を設置していってもきりがないので「椅子が移動すれば良いんだ」という考えに至りました。

──実際にプロトタイプを制作されていますが、実証実験などを通して気付いたことはありますか。  街へプロトタイプを持ち出して実験してみたのですが、見えてきたのは「そもそも街に出ている人の多くは元気な人ばかり」という現実でした。本当に必要としている人ほど外に出られない。「当事者が街にはいない状態」にハッとさせられました。加えて、屋外での使用には雨天時はどうするか、といった課題も多かったため、屋内で使用することを想定し始めました。

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 しかし室内は室内で難しさがありました。住空間には段差や障害物が多く、思った以上に超えるべきハードルがあったのです。

──なるほど。大本さんは今後どのように進んでいく予定なのでしょうか  すわるんばをどう進化させていくか、インキュベーションプログラムが終わった今も模索していますが、まだ先行きは見えていません。現状、技術的な課題は大きいと感じているため、開発は一旦ストップしていますが、これを研究活動へ生かそうとしています。建築・都市のスマート化が進む現代において、人間とAI、ロボットが共生する空間の在り方を考えていく必要がありますが、すわるんばの開発から得た経験・視点が役に立つと考えています。

 キーワードは「ロボットフレンドリーな建築空間」。動く家具のために家や街をどうつくるか、さらに、動く家具にやさしい空間では、どのような活動・居住スタイルが生まれるのかを研究したいと思っています。例えば、欲しいものを運んできてくれる棚があれば、収納方法は変わってくるはずですよね。

 すわるんばで得た学びから、ロボットオリエンテッドな住空間・都市の設計理論を追及する研究を行うことで、今度は研究が実践に生かせるかもしれません。研究と実践の往復に挑戦していきたいと思います。


 一般社団法人ASIBA(https://asiba.or.jp/)は、クリエイティブ領域に身を置く30歳以下を対象として「問いと実践を往復するクリエイティブ・アントレプレナーシップ」を育み、社会実践を目指す、ASIBA Creative Incubation Program 3期を2025年4月から開講いたします。 <募集期間> 募集期間は以下の通りです。 プレエントリー期間と本エントリー提出期間が異なるため、ご注意ください。 プレエントリー締切:2025/4/9 18:00 本エントリーフォーム提出締切:2025/4/9 23:59 選考結果の通知:2025/4/12まで 詳細については次の記事をご覧ください。