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解体を迎える小学校に宿る記憶 ─ 旧高島第七小学校棟下式第4弾

解体を迎える小学校に宿る記憶 ─ 旧高島第七小学校棟下式第4弾

かつて東洋一のマンモス団地とよばれた高島平団地。1979年に開校した高島第七小学校は、2007年に閉校して以来、長らく活用方法が決まっていませんでしたが、来年度から一帯の再開発に伴う段階的な解体・建て替えが予定されています。その思い出を共有し、高七小とお別れする最後の機会を作ろうと、1年間にわたり棟下式(むねおろしき)を実施しています。昨年12月の第4弾では校舎の備品や材を地域の方へと受け渡す「お譲り会」が実施されました。


https://note.com/asiba_studio/n/nbbe57f4cb435

当日は備品や材をお渡しした一人ひとりの方から、高七小にまつわるさまざまな記憶や思いの聞き取りを行いました。本稿はその一部を、なるべく会話の口調を維持したまま編集したものです。
一つの小学校の終わり、そして受け継がれる材を通じて紡がれる「高島平の生活史」をぜひご覧ください。



2025年12月13日 10:05
「ここの先生に絵が上手って言われて、それで美大に」

(女性)
なんか娘は図工室のものがほしい、結構思い入れがあるって。
美大に進んだんですね。
ここの先生に絵が上手って言われて、それでずっとやって、武蔵美、そこに進んだんで。
私はあんまりだけど、図工室に思い入れがあるって。
図工室の椅子、とりあえずこれもらおうかしら。

── 娘さんは大学でも絵を勉強されてたんですか。

デザイン情報学科って言って、新しく新設されたとこなんですけど。
だから絵画をっていうんじゃないんだけど、出発点はここですよね。

── この図工室の札とかもいいんじゃないですか。

あ、いいかも。じゃあこれも娘に。
いま私らはまだ団地に住んでいるけど、娘は田舎の方に移住したので。
そっちは戸建てだから置けるので。
板とかもいいですね、でもこの札いいよね。
これほしいです。

── 娘さんから連絡が来たんですか。

そうです。
私も知ってはいたけど、団地に住んでるから。
ポスターがかかっているから知ってはいたけど、特に来ようとは思っていなくて。
でも娘が行ってほしい、いま高知県なんですけど、実家がそこだから。
図工室のものが欲しい、行ってきてって。
椅子が一番欲しいって言うから。

── ずっと高島平にお住まいなんですか。

そうですね、ずっと最初からだから、もう40年くらいですね。
でも令和11年で建て替えなので、私も田舎の方に。
娘がひと足先に帰ったけど、私も、一軒家が空いているから。
あ、ありがとうございます。
じゃあこれも娘に。とりあえずLINEしようかな。
娘がいま田舎の方で店を作っているので、板とかも使えるかもしれないけど。
とりあえず聞いてみます。

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2025年12月13日 10:24
「せっかく板橋来たから、地域のこういうイベント来てみようって」

(男性)
すみません、この量りってもらえますか。

── もちろんです。

やったー。
買おうと思ってたんですよ。

── 何に使われるんですか。

ガレージの床の塗装で、硬化剤と顔料を混ぜる時に。
キッチンの量りが1キロしか量れないので。
10キロ20キロとかになってくるから。

── お宅はどのあたりなんですか。

すぐ近所で。

── 高七小のご関係者ですか。

(男性)
いや、違くて。
最近、奥さんが妊娠してから、大田区から板橋区に引越してきたんですよ。

(女性)
ね。せっかくだから板橋区の小学校どんなのか見たいなーと思って来ました。

── お家をリノベーションされているんですね。

(男性)
中古でお家買って、憧れのガレージを手に入れたんで。
塗装どうしようかなって思ってたら、奥さんが今日こういうイベントあるって。
せっかく板橋来たから、地域のこういうイベント来てみようって。

(女性)
ね。見れてよかったね。
ありがとうございます。

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2025年12月13日 12:55
「うん、まだ学校あるなって」

── これ(拡声器)は何に。

(男性)
これは、普通に何かあった時に。
どうぞーって。
電池入れて動けばね。
あとはもう今こういうのあんまないから、飾ってもね。
近いならもうほんとに便利なんですよね。

── こっち(教育目標の貼り紙)は何に。

これはもう完全に私の趣味です。
卒業生なので。
このまま掲げておくと。テレビの横にでも。

── 覚えてますか。

覚えてますよ。
今でも校歌も覚えてます。

── 卒業したのはいつ頃なんですか。

昭和62、3年じゃないかな。平成が近かったから。
今こっち離れてるんですけど、まだ実家こっちなんで。
ちょこちょこちょこちょこ遊びには来るんで。
もう目の前の団地なんでね。
来る時じっーと見て、うん、学校まだあるなって。
やっぱり寂しいですね、これなくなっちゃうとね。

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2025年12月13日 13:20
「47年に来て、ここ原っぱだったの」

── お住まいはこの辺りなんですか。

(女性)
隣なの。3丁目の。

── ずっとお住まいなんですか。

はい、そうなんです。
(昭和)47年から、この学校ずっと見てる。
ここ前は学校なかったのよね。
で、学校ができて。
いつもここの学校、ベランダから見えたのよ、子どもたちが。
朝早く来てサッカーやってましたよね昔。
そういうのみんな見えたんですよ。
47年に来て、ここ原っぱだったの。図書館だけがあって。
だからね、信号のところがうちから見て、子どもが信号渡っていくのが見えた。

── お子さんはここの小学校ではないんですか?

うちはね、五小なの。
ここは後からできたから、五小がいっぱいになって。
いやでも壊されちゃうのが、ねえ。
寂しくなる。

── 新しいマンションが建ちますね。

ねえ、ここにできるのかしら。
風景が変わっていきますね。

── 今日はどうしていらっしゃったんですか。

学校のあれじゃないんですけど、いつも見てたもんで。
ちょっとね、やってるっていうんで。
このカップ、これ全部いただいちゃまずいかしら。

── いえいえ、大丈夫です。

プリンのカップにするの。何にでも使えるからね。
ミキサーして、かぼちゃかなんか冷凍しといて。
で、入れといて、使う分だけ。
すみません、こんなにもらっちゃって。
大事に使わせていただきます、七小の記念として。

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あとがき

僕が高島平という土地を訪れたのは、この棟下式の運営に参加したのが初めてでした。地域に愛され、惜しまれつつその終わりを迎える高島第七小学校。字面の上では分かっているつもりだったその意味は、今回何十名もの卒業生・元職員・地域住民の方とお話しする中で初めて、その重みも含めて理解することができたような気がします。

使い古された小学校の備品は、一見すると「ただの廃棄物」です。でもその物を通じ、本来交わることのなかった世代や立場の人と人がつながり、地域のあり方を考える新たな場が生まれ得ることを強く実感しました。今後も聞き取りを続けることで、物が受け継がれる中で育まれる地域コミュニティの姿を形にしていきたいと思います。
(聞き手/文・鏡理吾)