
【特別セッション】 動かない社会をどう動かすか ─ 構造に挑むためのアントレプレナーシップとは
行政や市民参加、まちづくりといった領域は、複数の制度・組織・関係性が交錯し、簡単に変わることはない。それでも、暮らしに密接に関わる領域だからこそ、そこに変化を仕掛ける意志と方法が求められている。非市場的かつ公共的な領域でアントレプレナーシップを発揮する3名の実践者が、それぞれの現場で「動かなさ」とどう向き合い、どんな戦略で社会を動かそうとしているのかを議論する。
(本稿は2025年11月21日、渋谷QWSで一般社団法人ASIBA(以降、ASIBA)と株式会社アットカマタ(以降、@カマタ)共催された1dayカンファレンス『Towards Creative Entrepreneurship ークリエイティブ領域における社会実装の可能性と、その方法論を問う』内のセッション2『動かない社会をどう動かすか 構造に挑むためのアントレプレナーシップとは?』の模様を再構成したものです)
単年度契約の限界を越える
髙野広海:
お三方ともコロナ禍、2020年前後に創業されていますが、もともとの独立した理由や動機はどういったものだったんでしょうか。
石塚理華:
ITデザイン業界でファーストキャリアとして活動していたんですが、当時は特にデザインがビジネスのためのデザインとして語られていました。KPIとかCTAでデザインが語られていたんですね。もちろんそれも大事ではありますが、私が学んできたデザインってそういうだけじゃないんだけどな、みたいなモヤモヤを抱えていたとき、たまたま同じようなことを考えていた今の共同代表2人と出会いました。
そこからまずは私達の中でこういうの良いよねとか、こういうことやっていきたいよねというものを調べて発信するところ、いわば手元でできることからプロジェクトを始めていきました。
栗本拓幸:
僕は高校3年生の終わりにたまたま東欧のエストニアに行く機会がありました。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、エストニアは、電子政府が有名なんです。それをプレス向けに公開しているShowroomという場所があっ李、通常であれば一般人は入れないところをどうにか見せてくれと頼み込み、アフリカのとある国のプレスチームに混ぜてもらったことがありました。その時、そのプレスチームの方に、「何で日本人がこんなとこ来てるんだ、ITの活用だったら日本が一番じゃないのか」ということを大層真面目に聞かれました。
それまでも若者の政治参加に関わる活動に関わっていた中で、その体験をしたことで、IT・デジタル技術も活用してやらなきゃいけないという思いを持つようになったひとつの原体験です。その後大学に入り、一番最初は海外のプラットフォームを日本でローカライズさせようと活動を始めたんですが、せっかくやるなら日本やアジアのコンテキストにあったものをつくろうと。加えて、参議院選挙や統一地方選挙などのきっかけが重なり、2020年の2月に創業することになりました。
石川由佳子:
私は独立するまで、都市領域のクライアントワークをメインに取り組んでいました。行政や企業からのお題があって、それをもとに一緒にプロジェクトを作っていく形でしたが、やっぱり街のことって規模が大きいし、時間軸が長い。1年や2年で自走させましょうと言っても、簡単にできることではないですよね。それなのに担当者が変わりました、プロジェクトの予算が尽きました、みたいな理由で一方的に終わりを作られてしまうことがすごく嫌で。限られた人生の時間を使い、責任を持って取り組んでいきたいし、何より自分で終わりを作りたい。そんな思いが活動を始めた大きなきっかけになっています。

髙野:
なるほど、特に石川さんの仰った単年度契約の限界みたいな話は大きな論点かなと思っています。自治体のようなパブリックなセクターと共に長期的な取り組みを行っていくとき、そういった制度自体に介入するために、皆さんどのようなアプローチをされているんでしょうか。
栗本:
個人的には、行政との取り組みは単年度で終わってしまうというよくある指摘は半分正しいものの、座組の問題とも捉えています。
前提として、毎年度末に何らかの評価がされることは必要です。一方で純粋なソフト事業でなければ、たとえば長期債務負担行為を組んで5ヶ年や10ヶ年で契約するということも可能です。あるいは包括連携協定を結べるのであれば、毎年度末に更新は必要だけれども、中長期でやっていこうというミッションを自治体と一緒に打ち出すことができるわけですね。何らかの大きなミッションに対し、それを追いかけるのが大事なんだということを、担当レベルだけでなく理事者も含めて合意があれば、常に行政は単年度主義であるという思い込みは、思い込みにすぎないのかなと考えています。
髙野:
それこそ、石塚さんが公共とデザインでの活動で取り組まれてきたような「行政の中の文化を一緒に作っていく」というところが大事だと。
石塚:
私達も自治体からの受託を更新しながら2・3年単位で進めていくことが多いんですよね。1年で終わらせるゴールを作るみたいなことはあまりやっていなくて、むしろ私達が目指す北極星ってあそこだよね、まずはどうやってそこに行けるか考えようよ、と視座を合わせるところから始めていくとか。そんな地道な取り組みを色々なプロジェクトでやってるかなと思います。
個人の創造性と自治体の民主制
髙野:
確かに、北極星っていうワードはすごく良いなと思うんですが、ずばり皆さんが見ていらっしゃる北極星はどこにあるんでしょうか。それから栗本さんと事前にお話しした際、お三方のセオリーオブチェンジ、つまり目指す北極星のために何をどう変えていくかの道筋が気になると仰っていましたが、その点に関しても皆さんいかがでしょうか。
石川:
私達はやはり、個人というものにすごくフォーカスしているし、個人の力を信じている。一人ひとりがどういう環境だったらその創造性を発揮できるのか、どうやったらその状況や環境を作っていけるのかというところに取り組んでいますし、今その過程や成果がいろんなスケール感で現れてきていると思っています。逆に言うと、いわゆる社会起業家のようにこういう世界を作りたい、みたいな思いはあまりないかもしれないですね。
石塚:
私も石川さんと世界観が近くて、この山に絶対登るぞというより、むしろ散歩を楽しもうという感じのプロジェクトが多いかなと思うんです。ただ、私達も個人の創造性が広がる環境の重要性を感じている一方で、それが個人の責任になってしまうような社会はちょっと窮屈だなって思うんですよね。
街ではいろんな活動が起こっては消えていく。その背景にあるのは、活動が誰か個人だけの仕事になってしまうとか、逆に個人が始めたことの文脈が受け継がれずにみんなが乗っかっていっちゃうとか。そういった状況を防ぎつつ、活動を制度や仕組みとして形にできれば、もしかしたら行政の事業になっていくかもしれないですし、より多くの人が継続して活動に取り組める創発的な社会環境を作ることができる。そのための行政や制度ってどうあるべきなんだろう、というのが私達のテーマです。
髙野:
最初は散歩から始まって、でも最後はそこまで変えていかないといけない、ということですね。
石塚:
まあ、私達自身はただ散歩してる感じなんですけどね。
髙野:
栗本さんはいかがでしょうか。
栗本:
一言で言えば、私たちの基本的なミッションは「民主主義をどうより良い方向に変革していくか」ということです。例えば、いま民主主義の領域で研究や実践をされてる方ってあまり待遇が良くない。手弁当でやってるプロジェクトはいっぱいあるけど、社会実装はほぼされないということが往々にしてあるんですね。
日本全体で見ても、海外と比べて民主主義領域に対するファンドや財団は圧倒的に少なく、社会のリソースを民主主義という領域に対してどう当てるかというのは大きなテーマなんです。それはお金だけでなく、人も然りです。どう現行のシステムを変革して、民主主義に対しコミットする人やお金を増やしていくのか、それが私たちの最も大事にしているミッションです。だからこそ、私たちが身銭を切っても、民主主義という領域に投資していこうということはチャレンジしています。
もう少し例を挙げると、日本の自治体のあり方を定める『地方自治法』の第一条には、自治体は能率的で民主的な行政をやってください、という趣旨のことが書かれているんです。能率的な行政の方はものすごく叫ばれていますよね。行政改革だ、行政DXだ、と。どう効率化するか、どう合理化するかといった議論はかなり活発に行われてきた一方で、民主的な行政の方は今まであまり語られてなかったんじゃないかというのが私の見立てです。地方自治体においてどう民主主義的な機能を回復をしていくのか、あるいはより分厚くしていくのか。私たちの活動は、ここにかなりコミットしている感覚があります。

パブリックにおける再配分のデザイン
髙野:
民主主義を深めていくこと自体にお金がつかないという話は、石塚さん・石川さんの領域においても同じなのかなと思っています。市場がなかったり、お金の出し手がいないような分野でさまざまなことに挑戦されているお二人の目線から、ご自身の取り組みにおいて、そして業界全体というよりメタな視点で見た時、その流れは今後どう変わりうると思いますか。
石川:
私たちって世界中どこでも、初めて会う方には二言目に「君たちはどうやってお金を稼いでるんだ」って聞かれるんですよ。やっぱり、私達が起こしたり支援したりしている市民から発露したさまざまな活動を、無理のない形で育てていけるようなインフラやサポート体制をきちんと構築すること、同時に私達もそういう主体と連携し、継続させるためのブリッジをかけることが必要になってきてるなっていうのはすごく感じています。
そういう意味では、もちろん今日の3人にも大きな共通のゴールはあると思いますが、そこへのアプローチや仕組み化という部分ではそれぞれ違っているというところで、こういった離れた領域をうまく組み合わせたシステムを作ることができれば非常に意味があるなと思っています。
それと、現状「市民」のアイデアから良いものを作れるわけでは決してないですよね。センスだったり美意識だったり、こういう風景が見たいという感性そのものを育てる必要もあると思っています。つまり、単純にオープンにして考えればいいっていう問題でもない。プロセスをオープンにした時、どういう市民がそこに応答するのかというところが実は課題なんじゃないかなと思っています。
石塚:
私がひとつ疑問なのは、私達みたいな活動をする人が無限に増えればいいのか、という問題です。世の中にはさまざまな社会状況の方がいるし、実際問題として働いて生活していかなきゃいけない。例えば忙しい子育て世代の方が、余剰の時間を全て使って都市に関わることってやっぱり難しいと思うんです。
そんな中、いま可能性があるなと思っているのが会社員という存在です。例えば会社員としてのリソースを使いながら地域に関わり直す、会社員としてのアイデンティティを持ちながら地域社会とを行き来をするという風に、少しだけ会社のリソースを使いながら「市民としての私」を発露させ、地域と関わり直すような座組です。これは私たちが「ケアの再配分」と呼んでいる概念の一部なので、このように現状の社会構造を少し再配分するような仕組みづくりは、今は個人の問題とされてしまっている状態を打破するための突破口になりうるんじゃないかなと思ってます。
栗本:
これは都市部なのか地方部なのかという前提によっても全く違ってくるかなと思います。都市部だと、公共的な物事を考える上でも民の力が非常に強く、民の持っているリソースをパブリックなものに対してどう再配分するかという議論をしなければいけない。一方で地方においては、未だに官が最大の事業規模を持っているケースも多いわけですね。
いずれにせよ、地域のみんなにとって大切な「公共サービス」の創造・デリバリーの双方において、官が総体を担っていて、多様な民がプレーヤーとしてなかなか活躍しにくい。そういう硬直化した関係をどう上手くリバランスしていくのか、同時に、創造する過程により多様な市民を包摂しつつ、プロセスの透明性をさらに向上させるということを考えなければいけないのかなと思います。
ただ、こうやって新しいお金の流れを作るのも大事なんですけれども、本家本丸の問題、つまり税金の使い方や既存事業のあり方をどう見直すかというテーマからはやはり目を背けてはいけないと思います。社会ニーズも住民のライフスタイルも大きく変わっていく時代の中で、まずは行政のお金の使い方を少しずつ柔軟にしていく。
例えば100万円の予算があって、今までであれば実績のある10個の団体に補助で出していたところを、50万円は補助のまま、だけど残りの50万円は賞金として1人1万円、50人の若者に分けます、といったことをするだけでも全然違った効果が生まれるわけですよね。使うお金の総額は変えられなくても、どこか使い方を変えていけるところはないかという視点はこれからより重要になるかなと考えています。
髙野:
少し話を変えて、このように皆さんが行っている取り組み自体を理論化したり、再現性を持たせるための調査研究を行うということに対し、会社としてどれぐらいのコストを割くのかという意思決定は難しい問題だなと感じています。新しい領域に挑むアントレプレナーだからこそ、プロジェクト単体だけでなく、社会に対してナレッジを開いていくことの意味は大きいと思うのですが、みなさんはどうお考えでしょうか。
栗本:
私たちはこういった調査研究活動にはかなり力を入れていますね。例えば行政からの委託で取り組む仕事は、原資は税金なわけですから、様々な知見をしっかりと体系化し社会に還元していくことは本来やるべきことなのかなと考えています。
特に日本においては、デジタル民主主義領域においての学問的な手がかりって、今までなかなかなかったんですね。ここに我々が先例としてお金を投下をしていかないと、これから先のプレイヤーが出てこない。いくら口で「研究活動は大事だよね」と言ったとしても、リサーチャーにそれなりの待遇があって、彼ら・彼女らが思う存分探求したいテーマを探求できるようにしないと研究もへったくれもないですよね。そのためいろんな工夫を講じながら、この調査研究活動には継続的にリソースを割きつづけています。
髙野:
具体的にはどのくらいのリソースを割いているんでしょうか。
栗本:
感覚的には、会社の持っているリソースの3-4割くらいですね。これだけ割いているのは、調査研究のリソース自体を持っているというのもありますが、会社の取り組みを国内の他の地域、あるいは海外に広げていくとき「こういったコンテクストでこういった取り組みをしてきました」という説明において活用できることがあるんです。実はそういった企業の営業活動上のメリットもあるというのは最近考えるようになりましたね。
石塚:
私としては、ここはやりたいと思っていてまさにできてないところですね。渋谷区や北区とDesign For Policyの文脈で事業を行ってるんですけど、これも同じく、日本でDesign For Policyの取り組みについて論文になっているものって多くはない。そういった意味でもやる価値はあるし、実際に論文書けそうだなと強く感じつつ、まだできていないというのが現状ですね。
あとは自治体と一緒に作るツールキットなんかも積極的に公開したいなと思っています。例えば、中小企業の女性職員が抱える働きづらさ、具体的には女子トイレがない、1人で産休入るときにちょっと言いづらい、といった職場の課題を改善するためのツールキット開発を京都府・亀岡市と共同で行ったことがあって。でもこれって決して亀岡市さんだけが悩んでる課題じゃなく、全国どこの場所でも使える知見なので、こういったナレッジもぜひもっと外に出していきたいと思っています。
石川:
理論化という点では、私たちはプロジェクトをやるときは場合によっては大学や研究員の人と連携して、新しい評価軸を作り、取り組みを再評価・再検証することを行っています。そしてやはり、プロジェクトというのはプロセスも含めてとても重要なので、それをアーカイブすることにはいつも力を入れてます。それも堅苦しいフォーマットではなく、いろいろな人が見たくなるアーカイブペーパーやブックレットという形で再編集して伝えることを意識していますね。
再現性という文脈では、私たちの活動の軸となる『forcities.org』というデータバンク、これはローカルをグローバルに考えるためのデータベースで、都市を愛でる様々なアーバニストたちの知見や実践知を共有するというコンセプトを持っています。まさに個人のさまざまな実践に対し、大きな文脈での再現性を持たせていきたいという思いを持っています。

社会を動かすクリエイティブアントレプレナーシップ
髙野:
ありがとうございます。時間も迫ってきたので最後は某番組っぽく、「あなたにとってのクリエイティブ・アントレプレナーシップとは」という問いを皆さんにお聞きしたいなと思います。
というのも、我々自身もクリエイティブ・アントレプレナーシップが大事だ、と言ってみてはいるが、存在しないところに言葉を書いてから像を立ち上げようとしているんですね(笑)。このイベントもその一環と言えますが、皆さんの思い浮かぶ、クリエイティブな解き方をしながら社会に仕掛けていくような具体的な人物でもいいですし、そのイメージでも構わないので、ぜひ教えてください。
栗本:
クリエイティブであることというのは、いわば「Being」を探求することだと思うんです。一般的なアントレプレナーシップというと、市場規模はこれぐらいで、これぐらいのレベニューシェアが取れるから、こういうビジネスやろうという発想が強いと思うんです。それは自らどうありたいか、社会がどうあってほしいか、といったBeingを考えるというよりは、すでにあるものに対してどう経済活動としてのチャンスを見出すかという話に近いと認識しています。
ただクリエイティブ・アントレプレナーシップにおいて、おそらく皆さんも近いかなと思いますが、私はどうありたいか、社会がどうあってほしいかという思いの方が強いと思うんですね。その「こうありたい」というものを探求する上において、単に経済合理性だけで回らないものを、経済合理性以外のいろんなものもかき集めながら、それが場合によっては、市民社会セクター間の動きかもしれないし、ムーブメントを作るということかもしれない。
いずれにせよ、経済非合理のところにいろんなものを手繰り寄せながら、作りたいBeingの下支えをしたり、Beingを形作りながらその境界線を描いていこうという姿勢ですね。そういう意味では、一般的なアントレプレナーシップよりもいろんな打ち手を、市民社会セクターを含めた広い幅を見ていかなければいけない。それと同時に、やはりそこで一定の経済性を達成しなければいけない。より考えることが多く、複層的であるというかもしれませんが、そういったことを通してBeingというものを探求すること、それがクリエイティブアントレプレナーシップという言葉の意味する人物像かなと考えています。
髙野:
まさにASIBAが考えている課題感が現れていて、私たちとしてもそれを乗り越えるために実践を続けていきたいなと思いますね。続いて、石川さんはいかがでしょうか。
石川:
私にとってクリエイティブアントレプレナーシップとは、火をくべて、その場を温め続けるというようなことかなと思いました。私がすごく尊敬してるアーバニストに、オランダ・Cascolandというチームの代表のフィオナっていう女性がいるんです。彼女はいつもそこにいる人、暮らす人たちが心地よい状況になるために、いつもどろどろになりながら薪をくべ、場を温め続けるんですね。
髙野:
それは物理的にですか?(笑)
石川:
物理的にもです(笑)。何か理想像をぶつけて「あんたたちついてきなさい」と言うのではなく、まさにそこに発露しているものに温かく火をくべて、それが心地よく育っていくような状況を作る。そんな彼女の姿が私はすごく印象に残っていて。今日お話しする中で改めて、自分がやりたい世界観、何かを起こしていく形ってそういうアプローチなのかなと感じました。
髙野:
すごく情景として浮かびますよね。誰がクリエイティブアントレプレナーで、誰がそうじゃない、というように区切ることではなく。この概念が、そうやってより輪を広げていくようなものであったらいいなと感じました。では最後に、石塚さんはいかがでしょうか。
石塚:
私にとってのクリエイティブアントレプレナーは「enabler」としてのデザイナーかなと思います。enableというのは可能にする、つまりenablerは可能にする人という言葉なんですが、自分の周囲やプロジェクトに関わる人たち、あるいは何か生活や地域・課題の当事者の人たちが自らの生きる可能性だったり、もっとできるかもしれない、というある種の像を描けるようになること、そしてそれを進めていくために何か小さくアクションを起こせること。そういった一見地道なところから何かを可能にしていくような姿が、私の思うクリエイティブアントレプレナーシップというものに近いのかなと思っています。
髙野:
ありがとうございます。セッション全体を通して、ひとつの言葉に対していろんな切り口や見方がありつつ、でも目指している北極星は近いはずだ、という感覚を共有することができたのではないでしょうか。改めて皆さん、本日はありがとうございました。


石塚理華さん
一般社団法人 公共とデザイン 共同代表
〈多様なわたしたちによる新しい公共〉を目指し、ソーシャルイノベーション・スタジオ「公共とデザイン」を設立。企業・自治体・住民・課題の当事者と手を取り合い、民主的社会環境(クリエイティブデモクラシー)を耕すための取り組みに従事。渋谷区とのイノベーションラボ設立支援や、〈産む〉にまつわる価値観を問い直すプロジェクト『産まみ(む)めも』など。共著に『クリエイティブデモクラシー』(2023年、BNN)

石川由佳子さん
アーバン・エクスペリエンス・デザイナー (都市体験デザイナー)/ アーバニスト/ 一般社団法人for Cities 共同代表理事
「自分たちの手で、都市を使いこなす」ことをモットーに、国内外の様々な人生背景を持つ人たちと共に、市民参加型の都市体験のデザインを行う。( 株 ) ベネッセコーポレーション、( 株 ) ロフトワークを経て独立。都市体験のデザインスタジオ「一般社団法人 for Cities」を立ち上げ。同社団法人、共同代表理事。場のデザインプロジェクトを、東京(三菱地所/Sony Park miniなど)、京都、神戸(神戸市 / KIITOなど)アムステルダム、カイロ、ホーチミン、チェンマイなど国内外の複数都市で手がける。まちとみどりとの関係性を再編集する街路樹のデータプラットフォーム「Dear Tree Project」主宰し、地域や行政と組んだまちのみどりの利活用を行う。みどりを取り巻く仕事 のこれからを考え創造していく一般社団法人ソーシャルグリーンデザイン協会理事。神田にコミュニティ拠点「watage」を立ち上げ、ユース世代のためのアーバンデザインスタジオとして活動を実施。リサーチ、企画、編集、教育プログラムの開発など、都市をテーマに行なう。 WIREDが選ぶ「リジェネラティブ・カンパニー・アワード2023」受賞。都市の中で、一番好きな瞬間は「帰り道」。

栗本拓幸さん
株式会社Liquitous
1999年生まれ、NPO法人・一般社団法人理事を経て、2020年に株式会社Liquitousを起業。「一人ひとりの影響力を発揮できる社会」を目指し、自治体におけるデジタル民主主義の基盤として、市民参画プラットフォーム「Liqlid」を開発。現在、京都市・日野市などの日本国内や中部ジャワ州ペカロンガン市などインドネシア共和国内の自治体などと協働。総務省 地方公共団体の経営財務マネジメント強化事業アドバイザー、大阪府・大阪公立大学「合意形成研究会」構成員など。

髙野広海
ASIBA Producer / Government Relations
高度経済成長期の都市計画史を専門とし、ワンルーム住宅の都市史、大学紛争が都市計画教育・研究・職能像の展開に与えた影響などを研究。ASIBAでは自治体とのコラボレーションを通じた地域課題へのクリエイティブ・アプローチの創出を中心に、幅広いプロジェクトに参画している。2022年にはコロナ禍による異分野交流の減少を背景に、東京大学にて学内最大規模の分野横断型カンファレンスであるTEDxUTokyo を5年ぶりに復活させた。TEDxUTokyo 2022 代表 (Founder) / 第16回国際地理オリンピック日本代表