
【特別インタビュー】生き物の視点で考える都市デザイン入門(全四回)を開講します!|ASIBA
一般社団法人ASIBA(代表理事:二瓶雄太)は、日鉄興和不動産株式会社様、大成建設株式会社様との共催で、全四回からなる「生き物の視点で考える都市デザイン入門」を開講し、第一回を9/11 (木) 15:00~18:00にて実施します。 ※第二回~四回以降についても順次公開予定
私たちが普段生活している都市の見えないところで、生き物たちのたくましく豊かな暮らしが営まれています。都市の住み心地や豊かさを生き物の視点に立ってフィールドワークし、それをもとに都市や建築・プロダクトの新たなデザインの仕方を考える、全四回のプログラムが始まります。
その第一回目のゲストとして、合同会社Poietica 共同代表/京都工芸繊維大学研究補助員の奥田宥聡さんをお招きして、KICK OFFトークセッションを行います。 本noteでは、今回のプログラム開講に至った経緯と、その内容の一部をお届けします。
始まりはプロダクトデザイン
インタビュアー: 奥田さんは2023年に合同会社Poieticaを設立し、デザインリサーチやプロトタイピングの方法論を活用した種々の取り組みを行われてきました。奥田さんのデザイン活動の始まりは何だったんですか?
奥田: もともと、大学の学部生のときはプロダクトデザインの王道を学んでいて、家具や家電といった生活スケールの道具のデザインを考えていた時期がありました。
ただ、在学中から、世の中のデザインの対象が拡張してきたなという感覚がありました。もともと2010年代から、ソーシャルデザインやサービスデザインといった、モノ以外にデザインの目が向けられ始めていましたが、それからも社会の課題とか、一つのプロダクトだけで解決できないような問題に対して取り組むようなデザインが注目されてきてたんです。
僕自身もやはり、もう少し横断的な取り組みとか、仕組みやシステムのデザインみたいなことも含めてやらないと、良いインパクトが出せないんじゃないかと思うようになりました。
特に強く印象に残っていたのが、街中に置かれている「排除ベンチ」ですね。ホームレスの人が寝られないようにわざと形を変えたり、手すりをつけたりしたベンチのことです。あれにはプロダクトデザインの限界をすごく感じました。公園の「治安」を良くしたい、というクライアントのニーズに沿った結果、 社会的な弱者を排除するような、親切でないプロダクトが生まれてしまっている。

「生き物」について考えるようになったきっかけ
インタビュアー: 都市の中の「生き物」について考えるのも、それと関連しているんですか?
奥田: はい、正直な話、実はペットを飼っていたこともあまりないし、バリバリの都会育ちなので、僕自身生き物にめちゃくちゃ詳しいわけではないんですよね(笑)。
でも、僕としては「排除ベンチ」のように、短絡的なデザインのやり方を変えたいというモチベーションが強くて、その延長線上に、今まで排除されてた生き物があると思っているんです。だから、都市の中に住まう「生き物」という主題を通して、そのデザインの仕方とか、考え方自体を考え直したいというのが背景にあります。 今僕がPoieticaでやっていることもそれに大きく関連しています。いわゆるデザインファーム的にサービスデザインやコンサルティングをする傍ら、「サステナビリティ」を技術的解決策だけでなくデザインの観点からアプローチできないか考え続けています。そのために、生き物のためにデザインするとか、生き物と一緒にデザインする、新たな領域のデザインを研究・実践しています。
「解決」を急がない「生物多様性」とは
インタビュアー: 産業でもアカデミアでも、「サステナビリティ」という言葉がどこでも人口に膾炙するようになりました。普通の人が思う「サステナビリティ」といえば、省エネの技術の開発だったりとか、代替エネルギーの発見なんかが思い浮かぶんですが、奥田さんはどうお考えですか?
奥田: エンジニアリングの手法とは少し異なり、僕の主な関心は「適応型」のアプローチというもので、主体である人間の方に着目して、文化や価値観をどう維持していくか、または変えていくか、に興味があります。
分かりやすい具体例で言うと、暑さに対処するために冷房を効率化していくのが前者だとすると、後者は「クールビズ」のようなものが対象になります。今までのように暑苦しい服を着なくてもよしとしよう、みたいな。要は技術そのものよりも、人間の認識が変わっていくことで問題と向き合うという考え方です。
インタビュアー: なるほど。今回のテーマである生物とか生態系みたいなものは、どのように向き合っていけば良いのでしょうか。
奥田: そうですね。言ってしまえば、環境の生態系とか環境の問題って非常にスケールが大きくて、分かりやすいものだと、人工林や、浚渫、磯焼けといったものが問題として挙げられがちだと思うんですよね。そうした問題を根本から解決しようとすれば、正直なところ個人単位で出来ることはかなり限られるし、本当に国の政策や土木のレベルで考えざるをえないですよね。
でも、生き物とどう関わるかとか、どうやって自然のものに関心を向けるかとか、認識をアップデートすることは、個人からでも十分実行できます。また問題に対する解決策を安易に出さないことも大事です。一つの問題を解決したことで、往々にして次の問題が生まれることだってある。その問題が置かれているシステム全体からすれば、安易な介入だけでは見落としてしまったり、コントロールが利かなかったりするものが多くある。
だから、解決策を急ぐのではなく、そうした複雑なものを一人の主体としてどう認識し、受け止め、適応していくかは、都市におけるデザインの可能性を生き物に開いていくときに、考える余地があるんと思います。
街への認識を根底から変えるための「フィールドワーク」
インタビュアー: なるほど。だから生物多様性にそういったアプローチを仕掛けていこうと思ったら、何が必要なんでしょうか?
奥田: ここでは僕が大学院のときに翻訳に携わった『多元世界に向けたデザイン』という本を参考にしたいと思います。、本書からは今の経済的な発展や技術開発が、いかに西洋近代を前提にしているかがよく分かります。自分と世界は切り離されていて、世界に働きかけていくことで、探究を通じて、世界をより深く理解していける、と。でもそうした仮定に基づく進歩が、植民地主義であったり、気候変動といった、明らかに我々の住環境の悪化をもたらしている。

なので環境と自分を結構切り離さないことが大事です。自分にとってのその身近さとか、親しみみたいなものからくる想像力を働かせてほしいと思っています。例えば自分の愛犬について考えるのと、自分があまりよく知らない鳥について考えるのとでは、全然違う回路が働くと思います。愛犬との関わりはコントロールできることではなく一緒に生きていること自体に価値がある。
あるいは、三人称的ではなく二人称的に関わるとも言えるかもしれません。このような身近さがなければ管理やコントロールの対象になっていくのだと思います。
今回のフィールドワークでも、皆さんにそういった体験をしてほしいです。新しい見方やスキルを身に着ける、だけではなく、自分の生き物に対する認識が大きく変わってしまって、もう以前と同じ方法ではまちを見ることもできない、というくらい、根本的に心を動かされるような経験をしてほしいです。その経験が、デザインを大きく駆動させ、実現させる力を持つと信じています。

奥田 宥聡 合同会社Poietica 共同代表/ 京都工芸繊維大学研究補助員 1998年生まれ、京都工芸繊維大学博士前期課程デザイン学専攻修了。学部時より京都のNPO法人にて企業におけるソーシャルイノベーションのための新規事業領域探索支援に3年ほど携わる。在学時よりフリーでのデザイン業務を経て2023年Poietica設立。デザインリサーチやプロトタイピングの方法論を活用した事業開発や作品制作に携わる。
