
【パートナー対談#2】 うちわから建材へ。NOVAREとASIBAの共創が育む、記憶のプロダクトブランドの歩み|ASIBA
スマホをかざすだけで思い出を保存・再生できる“思い出召喚ステッカー”を展開するASIBA3期生・yomiyomi。ASIBAのディレクションの下、『温故創新の森 NOVARE』で来場者向けうちわへの実証導入を行いました。取り組みを通じて見えてきたASIBAとNOVAREの新たな共創の形について、清水建設 NOVAREコンダクター 岩城和幸さん、yomiyomi 仲村怜夏さん、ASIBA 二瓶雄太がざっくばらんにお話しします。(文・鏡理吾)
領域が自分自身を縛っていた
仲村さん: もともとyomiyomiはイベントやエンタメ業界での活用を想定していました。でもASIBAに参加してから、これまで接点のなかった建築・都市分野の方とお話しする機会をたくさんいただいたんです。 たとえば行政の方と市民参加型の記憶の残し方について意見を交わし、以前は想像していなかった可能性に気づくことができました。その中で、これまでは自分自身に制限をかけてしまっていたのではないか、もっと大きな未来を描けるのではないかと気づかされることが何度もありました。
二瓶: ASIBAも建築学生のコミュニティから始まり、今期からデザインやアートにも領域を広げました。分野が違うと根底にある思想そのものが違うということを、身をもって感じた3ヶ月間でした。たとえば建築はスケールが大きく、多くの人に受け入れやすいデザインが求められます。一方、アートの世界だと何を価値とするかは人によって違って当たり前。むしろ民主的に説明できないことにこそ価値が見出されます。 今期は建築・デザイン・アートなど多様な領域のプレイヤーが集まりながらも、互いに刺激を与え合う濃度の高い関係性を築くことができたと思います。デザインやアートは、きっと建築の何百倍も人口が多い領域です。その大海原にASIBAがこれから漕ぎ出すのだとしたら、今回はその良いスタートになったと感じています。

かつての協賛関係、これからの共創関係
二瓶: 今回NOVAREから「うちわを作ってほしい」と提案をいただいた時、せっかくなら今のASIBAにしかできないことを形にしたいと感じました。 じゃあ、今のASIBAにしかできないことって何だろうと考えた時、それはプロデューサーとしての姿ではないかと思ったんです。単発の受発注で終わらせるのではなく、どうやって長期的なプロジェクトとして育てていくのか、パートナーと同じ視点で考える。今回、インキュベーションプログラムで支援したyomiyomiを改めてASIBAがプロデュースし、NOVAREと共同で検証を進める形を作れたことはその好例だと思います。
岩城さん: 確かに、NOVAREにとってこれまでのASIBAは、応援しようというマインドが強かったと思います。でも、ただの応援からは、長期的に見れば何も生まれないんですよね。 この2年間で、ASIBAとの関係は協賛から共創へと変化してきました。実際、今回のような共創プロジェクトがいくつか動き始め、これからはより踏み込んだ関係を築いていこうという姿勢を共有できていると感じます。 もちろん、これまでの協賛関係が間違っていたわけではありません。ともに学びながら成長してきたからこそ、今「ぜひ一緒にやろう」と言いやすくなったのだと思います。

「こんなこと言っても刺さらないんじゃないか」
岩城さん: yomiyomiの話を最初に伺ったとき、正直に言うと「NOVAREと組む意味があるのだろうか」と疑問に思いました。その時は“思い出召喚ステッカー”というプロダクトの話が中心だったので、清水建設として一緒にできることは少なそうだなという印象でした。 しかし、その後のBEYOND会議* で、単なる商品の説明ではなく、思い出を未来に残すインフラをつくりたいという大きなビジョンを伺うことができました。その話を聞いた瞬間、僕自身が素直にその世界観に共感することができたんです。プロダクトの話ではなく、その根底にある想いを聞けたことで、NOVAREとして何ができるだろうと前向きに考えられるようになりました。 特に立ち上げ期のプロジェクトでは、具体的なプロダクトの話よりもビジョンをいかに伝え、共感を呼ぶかということが大事になります。そういう点では、ASIBAの参加者は自分自身のビジョンや想いを伝えるのが上手だなと感じます。
* インキュベーションプログラムDAY4で実施されたピッチセッション。2日間にわたりNOVAREで開催され、外部のパートナーやメンターからプロジェクトへのフィードバックを受けた。
仲村さん: 振り返ってみると、yomiyomiを立ち上げてからは、ピッチや営業の場で分かりやすさを優先しすぎていた気がします。メリットやファクトを伝えることに集中してしまい、本当に届けたかったビジョンまで伝えきれないことが続いていました。 でもASIBAに参加して、夢を持つ若者を応援しようという想いを持った外部の方々とつながる機会をたくさんいただきました。こんなこと言っても刺さらないんじゃないかという不安に対して、ASIBAが「いけいけ!」と背中を押してくれたことで、恐れずに自分の想いを伝えられるようになりました。
岩城さん: 突き詰めれば、プロダクトというのはあくまで手段でしかないですよね。私はyomiyomiのプロダクトはこれから変わっていくと思っているし、何より仲村さんご自身がそう考えていることが伝わってきます。 もちろん目の前のプロダクトのためにもがく必要はありますが、その先に大きなビジョンがなければ、そもそも、もがきようがないですよね。ビジョンを大事に活動されている皆さんを見て、私自身もとても刺激を受けています。ASIBAのインキュベーション、私も参加してみようかな(笑)

台風の渦に巻き込んでいく
岩城さん: 将来的には、必ずしも1対1の共創関係にこだわる必要はないと思っています。 yomiyomiも、今回うちわという形でNOVAREに導入することができましたが、たとえば実際の現場で建材に埋め込むというようなより大きなシナリオを、すぐに清水建設だけで実現するのは難しい部分もあります。 だからこそ、今はyomiyomiと相性のいい企業を巻き込み、yomiyomi自体が成長して、できることが増えたタイミングでまた一緒に取り組ませてもらう。 そうやって1対1の関係を起点にどんどんネットワークが広がっていくようなシステムを作っていきたいと考えています。まさに以前の記事の「台風の目」のように(笑)。
仲村さん: たしかに、台風の目のようだなというのは私も感じます。 3社・4社という大きな枠組みを考えた時、ASIBAに背中を押してもらうだけでなく、私たちが外でつながったプレイヤーをASIBAというコミュニティに巻き込んでいくこともできます。ASIBAはいろんなイベントに参加して疲れたときでも、は〜っと一息ついて帰ってこられる、いわばホームのような場所。私たちが頑張ることが、いつかASIBAの価値や存在感を高めることにつながるといいなと思っています。
二瓶: 台風の輪郭はあらかじめ設計できるものじゃないですからね。 それぞれが外に飛び出した分だけ、その輪郭も広がっていくんだと思います。
岩城さん: ASIBAもNOVAREも、誕生してまだ2年。ASIBAが頑張っている姿を見ると、負けていられないなと感じることもあります。これからも切磋琢磨しながら成長していけたらと思います。

岩城和幸さん 清水建設株式会社NOVARE プロモーションユニット コンダクター。2025年よりNOVAREに配属。社員のイノベーション・マインドを醸成する取組やNOVAREの施設利用のための整備を担当し、清水建設が掲げるスマートイノベーションカンパニ―の実現に向けて、事業構造・技術・人材のイノベーションに挑戦している。
仲村怜夏さん 2000年生まれ。九州大学休学中。2023年より、株式会社ゆめみでプロダクトデザイナーとしてアプリ開発や新規事業開発支援に従事。2024年には、同社のDEIB担当取締役にも就任。2025年に記憶のプロダクトブランド「yomiyomi」を立ち上げ、「モノに記憶を宿す」新しい思い出の残し方を社会に実装している。2025年度グッドデザイン・ニューホープ賞入選。
二瓶雄太 ASIBA 代表理事 / 東京大学大学院 博士課程 2000年生まれ。大学では建築の解体を専門とし、「建築の死」にまつわる文化・歴史・産業などを多面的に研究する。2023年にクリエイティブ領域特化のインキュベーション「ASIBA」を共同創業し、多数のプロジェクトの伴走支援やプロデュースを手掛ける。現在は、解体材のリユースをプラットフォーム化する「ReLink」、空きビル暫定利用のための居住カプセルを展開する「blankspace」などの経営企画を担当。自らも解体直前のビルにて職住一体の暮らしを実践している。2022年度 総務省 異能vation 採択。