
【特別インタビュー】AI時代に必須のスキル、ラピッドプロトタイピングとは-中條さんインタビュー-|ASIBA
苦労して企画書を作るよりも、素早く現物を作って試してみる方が早い。 生成AIの進化によって、このような制作のあり方が当たり前になるのではないでしょうか。 AIで自分が作りたいモノをつくる。人間の創造性を高めてくれる、AIの使い方とはどのようなものなのでしょうか?
一般社団法人ASIBA(代表理事:二瓶雄太)は、日鉄興和不動産株式会社様、大成建設株式会社様との共催で、全4回からなる「生き物とともにつくる都市デザイン入門」を開講しています (詳細はこちら)。 第3回 (9/26 (木) 15:00-18:00) は、特別イベント「アイデアを最速で実証するv0 Webプロトタイピング入門」として、単発でどなたでもご参加いただけます。学生・社会人問わず奮ってご参加ください。
本noteでは、東京大学後期博士課程でプロトタイピングや生成AIを活用した人間のコミュニケーションや創造について研究を行っている中條麟太郎さんにインタビューを行いました。
メディアやツールがコミュニケーションに与える影響
インタビュアー: 中條さんの現在の専門分野について教えてください。
中條さん: 私は現在、東京大学学際情報学府の後期博士課程に在籍しており、ドメインの研究分野はコンピュータを介した人間のコミュニケーション、ヒューマンコンピューターインタラクション (Human Computer Interaction, HCI) に関する研究です。
インタビュアー: HCIという分野は聞き馴染みがないですが、具体的にどんなことをやっているのですか。
中條さん: 現代人はビデオ会議やチャットを普段当たり前のように使いこなしていると思いますが、情報を伝える媒体 (メディア) やツールによって、私たちのコミュニケーションは無意識的に大きな影響を受けています。 例えば、チャットツールで人と人が連絡を取り合うときに、たとえメッセージが同じでも、メッセージの表示の仕方、例えばフレームを様々な形の吹き出しに変えたりすることによって、オンラインでの感情の伝わり方に変化が生まれ、コミュニケーションに違いが出ることが分かっています。

新しいメディアやツールをどう工夫して使いこなすか、それによって、コミュニケーションや人間同士のインタラクションがどう変わるか?それが私の主要なリサーチクエスチョンですね。
AIと創造性について
インタビュアー: そのような研究分野と、今回のトピックである生成AIとはどんな関係があるのですか?
中條さん: 人間同士のコミュニケーションと並ぶ、もう一つの大きな主題があります。それは、新たな技術によって、人の創造性はいかにして高められるか?というものです。 よくAIによって人間の創造的行為は代替されると言われますが、私としては本来人間がやるべきことにより集中できるようになって、創造性はさらに高まると考えています。
例えば企業が新サービスのローンチをするまでに、従来は製品を作る前に丁寧な市場調査を行ったり、企画書を作ったり、何より膨大なヒューマンリソースを割いて開発を行うことが一般的でした。しかし、新しいアイデアを形に起こすときに一番大事なのは、作ったものを実際に使ってみて試したり、人に使ってもらって反応を聞き、洞察を深めたうえで再度制作をブラッシュアップする、といったイタレーションプロセス (繰り返しサイクルを回すこと)なのです。
インタビュアー: 問いと実践の往復ですね。研究の分野でも、AIは理論を作れるが、実験までは代行してくれないという事がよく言われます。
中條さん: デザインであっても事業創出でも研究でも同じことのように思います。今ではAIが、CGパースやプロダクトの素案はもちろん、新規事業の企画書や科学的理論までも作れるようになりました。 我々人間も、これまではそうやってペーパープロトタイプを作成して、事前に完成をイメージしながら良し悪しをディスカッションしていました。しかし、現実にはどうやっても脳内と実際は違うものになるのが課題でした。
その点、AIはたたき台を低コストで作るための道具として非常に有用です。ならば我々はそれをユーザーに届けたり、現場で試したりして振り返る。人間とAIの役割分担によるものづくりによって、創造性は未だかつてないほど高められると考えています。実際スタートアップの分野でも、このようなラピッドプロトタイピングを活用することで、イノベーションの速度が何倍にもなっているのです。
今回のテーマに寄せて
インタビュアー: よく分かりました。今回のイベントも、そこに力点を置いていくんですね。
中條さん: その通りです。今回はまず、「v0」というノーコードでWebアプリを制作できるツールを用いて、皆さんのアイデアを素早く形にしてもらいます。 そのうえで、今回は実際のフィールドがあるというのも大事なポイントです。制作したアプリをフィールドに持っていき、皆んなで実際に使ってみることで、アイデアが的を得ているのか・アイデアの実装の形として相応しいのか、のフィードバックを得ることができるのです。


インタビュアー: それは面白そうですね。今回作ってもらうもののテーマは何なのでしょうか?
中條さん: 今回のテーマは生物多様性です。とはいっても生き物の生態や種数だけに注目するのではなく、「人間と生き物の交差するポイントを、いかに面白くつくれるか」になります。都市の中でいかに人間と生き物が楽しく暮らしていくか?に焦点を当てていくのです。 今回のイベントは、これまで2回目まで続けてきた連続プログラム「生き物とともにつくる都市デザイン入門」の第三回でもあり、これまでの知見を踏まえた、より洞察にとんだ制作物が出てくることを期待しています。 とはいえ、三回目からの参加も大歓迎です。生き物や自然が好きな人も、とにかくAIで何か作ってみたい!という人も、両方楽しめるイベントとなっておりますので、奮ってご参加ください。

中條 麟太郎
研究者・デザイナー 東京大学大学院学際情報学府博士課程在籍中。日本学術振興会特別研究員(DC1)。心理学と情報学、デザインをバックグラウンドに、コミュニケーションを円滑にするメディアデザインの研究と社会実装に取り組む。主な受賞として、東京大学総長大賞、ACM CHI 最優秀論文賞、グッドデザイン・ニューホープ賞など。
