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ネジ1本から参加、路上ワークショップ「建築屋台」の巻き込む力|インタビュー#1 榎本雄高|ASIBA
ASIBA Creative LeagueINC-2ND2期生インタビュー

ネジ1本から参加、路上ワークショップ「建築屋台」の巻き込む力|インタビュー#1 榎本雄高|ASIBA

 建築・都市・デザイン領域で新たな未来を描く若きクリエイティブアントレプレナーに、これまでの活動の原動力や、抱えてきた悩み、それらをどう乗り越えて1つのプロジェクトへ昇華させてきたのか、「軌跡」に迫る本企画。第1回はASIBAのインキュベーション2期生で、プロジェクト「建築屋台」の代表・榎本雄高に話を聞いた。(聞き手=安部道裕)


榎本雄高(えのもと・ゆたか) 「公共の居場所づくりを、より街に開く」をコンセプトに、従来に無い参加型デザイン/施工ワークショップのあり方を検討している。高円寺と慶應義塾大学内でコミュニティカフェのユーザー共同デザイン、施工・共同運営も行う。慶應義塾大学SFC 政策・メディア研究科修士1年、ASIBAインキュベーション2期参加

──まずは「建築屋台」について教えてください  建築屋台は「ワークショップの多様な参加の形」を目指したプロジェクトです。施工のための工具を屋台に積み込んで町に出向き、不特定多数の人を巻き込むべく路上でワークショップを行います。

──建築屋台に至った経緯をお聞きしたいと思いますが、このプロジェクトを始める前はどのような興味、あるいは問題意識などを抱いていたのでしょうか  根底には「コミュニティへの興味」があると思います。慶応義塾大学SFC総合政策学部に入学した当初は、地域社会学を中心に学んでおり、地域の人間関係を分析し、交流を生むための施策などについて議論していました。そこで感じていたのが「本当に地域に刺さる方策が、ここから生み出せるのだろうか」という疑問でした。

 悩んでいる時にたまたま参加したのが建築ワークショップでした。そこで見たのは、手を動かすことを通じて自然と人と人との交流が生まれる姿。「これだ」と思いましたね。自治会、懇親会といった「集まるための集まり」でなく、ものをつくるために手を動かすという「行為を共有する」ことがコミュニティ形成のための本質だと感じました。

──建築屋台の原点になる経験だったのですね  はい。この経験を機にワークショップにのめり込んでいきました。建物の床を貼るワークショップや、滋賀県で地域の人が集まることのできる藤棚を作る、といったさまざまなワークショップに参加しました。参加するだけでは飽き足りず、自ら開催することも始めました。私が主催した、大学の生協の一角にカフェを作るワークショップでは、計画から施工まで専門工事以外のすべてを行い、その後の運営補助まで手掛けました。

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──ワークショップの面白さはどこにあると考えていますか  参加していく内に気付いた、建築を学んでいない「普通の人」から出てくる発想の面白さですね。記憶に残っているのは、カフェの本棚をつくるというワークショップを開催した時に出た「本をそのまま天井から吊るして、ジャングルのようにする」というアイデア。本棚という形にとらわれない斬新な案は、実現はされなかったものの、脳裏に深く刻まれました。

 実は皆、空間をこうしたいという要望・アイデアを持っているのだと思います。「専門外の人は建築に口出しをしてはいけない、触ってはいけない」と考えている人が多い、というのをワークショップを主催する中で感じていました。その押し殺している部分を解放できるのが、ワークショップの醍醐味だと思います。

参加「する」ワークショップから、参加「しちゃう」ワークショップへ

─建築屋台は今までお話してもらったワークショップとは形式が少し異なりますよね。ということは、参加したワークショップで何か課題などを発見したのでしょうか  そうですね、熱中していたワークショップだったのですが、参加・企画回数を経るごとに、ある課題を発見しました。それは「参加者の幅が狭い」こと。参加者の多くは集まる場に慣れている人で、「少し気になっている」くらいの人が参加しにくい現状がありました。でも私は、もっといろんな人がいろんな形で参加してほしかった。その思いから、新しいワークショップの在り方を模索し始めました。

 「新しいワークショップの形を考え、社会に試したい」と意気込んで参加し始めたASIBAのインキュベーションプログラムでしたが、最初は思うように進みませんでした。ワークショップの主催者と参加者をつなぐプラットフォームをつくる」みたいなパッとしない案しか出ずに悩んでいました。

──そうなんですね。転機が訪れたのはいつだったのでしょうか  辛抱強くメンターやインキュベーション参加者と議論している時でした。ふと「ワークショップに来にくい人がいるのなら、逆にワークショップ側が行けば良いのではないか」というアイデアが湧いてきたんです。殻を破ることができた瞬間でした。そこから「出張建築学生」という、工具などを持った建築学生(=榎本)が派遣される案を経て、参加しやすいための場も設えるために、人と屋台がセットになった「建築屋台」という形に落ち着きました。

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──なぜ「屋台」だったのでしょうか  屋台には人を誘因する何かがあり、かつ知らない人同士でお互い話しかけても違和感がない空間性、ほど良いスケール感を持つと感じているからです。幼少期にインド、バングラデシュに住んでいた経験があるので、自分の原風景には屋台があるというのが大きいかもしれません。いつか屋台を開こうという野望があったのかも。

──建築屋台での取り組みについて詳しく教えてください  建築屋台では「どんなものをつくるか」を考えるブレインストーミングから、施工作業まで、道端で屋台を拠点にして行います。2024年8月には、街中で開催するワークショップ第1回を、高円寺で行いました。カフェの本棚を作るというワークショップで、近所の人や通りすがりの人など様々な人を巻き込みました。  皆の目に入る路上で作業をしていると「何をしているの」と声をかけてくれます。興味を持ってくれた人には「ビス1本打っていきませんか」などとスカウトして、少しだけ参加してもらいました。そこには、さまざまな参加の形があったんです。事前に申し込んだ参加者は100%コミットしたり、偶然通りかかった人は少しだけ参加したり、単に見学をしたり、作業をしている様子を見かけた近所のおばあさんはお茶を出してくれたり。多様な参加の形を実現できたのが、建築屋台の面白いところだと強く感じました。

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──建築屋台の今後について聞かせてください  今後の課題としてまず挙げられるのは金銭の部分です。やってみると、ワークショップで施主からお金を取るのは、ハードルが高いことが分かりました。というのも、ワークショップは大人数で体験会的にものづくりをするため、通常の施工に比べ効率は悪くなり、余計な費用もかかってしまうからです。その上、得られるものは「愛着」「コミュニティ」といった、重要ではあるがふわっとしているもの。理解はしてくれても、そこにお金を出してくれるまでの説得性は持てていないのが現状です。「ワークショップの価値をどう高め、浸透させていけるか」が今後の課題ですね。

──では最後に、榎本さんの描く未来について伺いたいと思います  「空間づくりを通して人々と交流する」という手法そのものが一般的になるような未来を描いています。例えば、白川郷には「結」という相互扶助の習慣があり、合掌造りの茅葺屋根の葺き替えなどは村の皆で協力して行っています。建築屋台の活動を続けることで、都市における「結」の形を探りたいと思います。

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 一般社団法人ASIBA(https://asiba.or.jp/)は、クリエイティブ領域に身を置く30歳以下を対象として「問いと実践を往復するクリエイティブ・アントレプレナーシップ」を育み、社会実践を目指す、ASIBA Creative Incubation Program 3期を2025年4月から開講いたします。

<募集期間> 募集期間は以下の通りです。 プレエントリー期間と本エントリー提出期間が異なるため、ご注意ください。

プレエントリー締切:2025/4/9 18:00 本エントリーフォーム提出締切:2025/4/9 23:59 選考結果の通知:2025/4/12まで

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