
Tokyo Futurescape Studio #01 「暗渠商店街×風景コラージュ」at 田端銀座 開催報告|ASIBA
2025年3月31日、田端銀座商店街の銭湯「松の湯」にてTokyo Futurescape Studio #01 「暗渠商店街×風景コラージュ」を開催しました。建築系の学生や地元の方々など合計約20名が参加し、銭湯に地図と写真を広げながら、コラージュで未来の風景を制作していきました。
ワークショップ概要
・日時:2025年3月31日 10:00-18:00 ・開催場所:松の湯(東京都北区田端4丁目3−9)、田端銀座商店街 ・主催/協力 主催: 一般社団法人ASIBA 開催支援:松の湯 協力:地域住民有志、地元区議会議員、一般社団法人ASIBA
1. 本ワークショップシリーズについて
本ワークショップは、東京の50年後、100年後の風景をポジティブに、発散的に妄想していくワークショップシリーズ「Tokyo Futurescape Studio」のプロトタイプとして開催しました。
民間都市開発全盛の時代にあって、長期的な視野を持ち、純粋に市民の生活を豊かにするためのアクションを起こせる公共セクターの重要性は高まるばかりです。しかし公共セクターのキャパシティは不可避的にシュリンクしていくでしょう。そんな中で、財源を割けないような優先順位が低い(とされている)課題をどう解いていけばよいのでしょうか。また公共セクターが1-3年単位の事業に縛られる中で、10-20年後を見据えたアクションはいかに可能なのでしょうか。

私達はそういった問題意識の上で、課題が複雑に絡み合う現代都市においては、課題解決型のアプローチよりも、ブリコラージュ的なプロセスによる発見と、それに基づいた「プロジェクト※」こそが重要ではないかと考えています。課題の優先順位をゼロサム的に検討するのではなく、自らポジティブな未来の断片を発見し、未来の可能性を構想し、そのために何かを形にする行為の集積の先にこそ、よりポジティブな都市があるのではないでしょうか。そしてその行為=「プロジェクト」こそ、ASIBAの目指すクリエイティブ・アントレプレナーシップです。
そして本ワークショップシリーズでは、東京の各エリアで未来の風景を探索的に描きながら、そのような「プロジェクト」につながるような発見・洞察を得ることを目指しています。
※ここでいう「プロジェクト」とは、ソーシャルイノベーションやデザイン研究の第一人者であるエツィオ・マンズィーニの唱えたものです。彼は社会変革に対してデザインが担う役割を強く主張する中で、既にある状況を問い直し、望ましい未来の姿を構想し、それに向かって具体的な変化を起こすことを「プロジェクト」と呼びました。そしてこうしたプラグマティズム的実践による社会を「プロジェクト型民主主義」と位置付けています。 詳しくは『クリエイティブ・デモクラシー』を読んでみてください!
2. 「暗渠商店街」としての田端銀座
かつて江戸は運河が張り巡らされ、水辺は物流と賑わいの中心でしたが、明治期以降に異臭などの課題から多くの運河や水路が暗渠化されていきました。東京都北区・文京区・豊島区などにまたがる駒込エリアは、かつて谷田川・藍染川が流れていたところに、いくつかの商店街が約1.5キロにわたって連続して続いています。その痕跡は地形として色濃く残っており、王子から不忍池に至る谷がくっきりと見て取れます。開発し尽くされた山手線沿線にあって、中低層の住商混在型の市街地が続くのは異質といえますが、昨今は一戸建てやマンションの立地、あるいはシャッター街化が進んでいます。


江戸・東京において地形と町割りが密接に結びついていることは、名著『東京の空間人類学』をはじめとする江戸東京論でたびたび指摘される点であり、専門家か否かを問わず多くの注目を集め続けてきました。
「暗渠商店街」は、暗渠化されたかつての谷沿いに中低層の商店街が連続するという意味では珍しいものの、豊かな地形を読み取って形成されてきた市街地であるという点においては、東京の典型的な日常風景であるとも言えます。そういった点に着目し、田端銀座商店街にて「暗渠商店街」というテーマでワークショップを開催しました。
駒込駅の北側250m、本郷通りと谷田川通りが交差する地点にある「霜降橋交差点」。 雨の日、谷田川通りを歩くと、どこからかほんのり生臭いにおいが漂ってくる。 この地域を北西から南東に横断する商店街は直線的ではなく、ところどころで緩やかに曲がり、人間らしい温かさを感じさせる。 JR駒込駅では巣鴨側で線路が下に見えるが、気づくと線路はいつの間にか高架になり、東口では線路の下をくぐっている。 そう、ここはかつての谷田川を暗渠化した場所に生まれた商店街、いわゆる「暗渠商店街」だ。低層から中層の商店が途切れたり枝分かれしながらも、約1.5キロもの長さにわたり連なっている。世界都市・東京にありながら目立つことなく、ごく当たり前に存在する不思議な日常風景。しかし、近年この周辺に次々と建設されるマンションに越してきた子どもたちが大人になる頃、この風景はどのように変わっているのだろうか。
3. ワークショップ手法について
本ワークショップの開催にあたり、地域の未来を探索的に考えるために2つのワークショップ手法をプロトタイプ的に開発しました。
未来冒険ワークショップ
未来冒険ワークショップでは、未来の風景を妄想する補助線を得ることを目的として、2種類のカードを作成しました。1つ目は「動詞カード」、2つ目は「時間カード」です。動詞カードには1枚ごとに異なる動詞が、時間カードには3年後~100年後まで様々な年数が記されています。

参加者はまず動詞カード3枚、時間カード1枚を選びます。次に3人グループを作り、その中でそれぞれの持つ時間カードに対して動詞を1枚ずつ出し、動詞カード3枚・時間カード1枚のセットを3つ作り直します。
そして自分のセットについて5W1Hを考え、ストーリー化したうえで、銭湯一面に広げられた地図の上に付箋でメモしていき、ストーリーを空間に落とし込んでいきます。

2種類のカードにはどんな効果があったでしょうか。まず、ただ将来の街の姿を考えるのではなく、時間軸を規定したうえで3つの動詞を与えたことにより、漠然とした未来に対してストーリーを組み上げる手がかりができ、あってほしい風景を想像しやすくなりました。「もしかしたら」「もしも」「できたら」といった言葉に続く、その人の街への思いや発見を引き出すことこそが本ワークショップの狙いであり、実際イベント中にそういった言葉をたくさん聞くことができました。
また3つの動詞があることで、普段とは違った動的な視点で街を見るようになり、より身体的に、五感を使ってフィールドワークができるという効果もありました。
風呂庭ワークショップ
風呂庭ワークショップでは、一面地図を貼った銭湯の中で、フィールドワーク中に撮影した写真を切り貼りし、未来冒険ワークショップで考えたストーリーをコラージュによって表現しました。
昨今はストーリーをビジュアライズする際に画像生成AIを使うことが多いでしょう。今回のワークショップメンバーにも、画像生成AIによるまちづくりワークショップのアップデートを目指すNESSのメンバーが参画していました。
一方で、実際に大量の写真の中から欲しい写真を選び、切り取り、配置し、張り付ける一連の作業では、AIにプロンプトを入れるよりもはるかに豊かな情報に触れています。例えば偶発的な写真との出会い、写真のどこを切り取るか、どう配置するかを試行錯誤する中での発見などです。手触り感のある行為だからこそ、テキスト上では納得していたものに違和感を覚えたり、新しいアイデアが芽生えたりと、様々な可能性に開かれているのです。
コラージュは課題解決のためのエンジニアリング的手法ではなく、限定的な「今あるもの」を「今ここで」組み上げる発見的なプロセスであり、その発見にこそ価値があると考えています。そしてその発見には、一般的な課題解決型のアプローチでは見逃される可能性に目を向け、ポジティブな未来を構想し逆算的に実現していく力があるのではないでしょうか。
4. 当日の様子
アイスブレイク
まずはアイスブレイクとして、松の湯の浴場に駒込エリアの1/250スケールの巨大地図を貼り合わせていきました。本来は運営チームが貼る予定でしたが、A1版25枚に及ぶ巨大地図を前にして配置が分からなくなってしまい、急遽参加者全員でアイスブレイクを兼ねて実施することになりました。
予定外ではあったものの、地図の貼り合わせは市街地の構成や地形に目を向けるきっかけとなり、学生と地域住民のあいだで地域の地形や歴史にまつわる会話が多数生まれました。


レクチャー・フィールド紹介
30年以上地元で区議をされている本田さんに、今回のフィールドである田端銀座商店街や駒込エリアについてのレクチャーをいただいたうえで、実際に街に出て参加者に地域を案内していただきました。特に戦後の区画整理の顛末など、デスクトップリサーチでは発見できないような街に埋め込まれた歴史についてご紹介いただきました。

未来冒険ワークショップ
未来冒険ワークショップでは、銭湯という会場らしさを生かし、動詞カードや時間カードを1枚ずつ脱衣所のロッカーに入れ、鍵をかけました。参加者はロッカーのカギを4本選び、動詞カード3枚、時間カード1枚を確保します。


次に3人1組でグループをつくり、お互いのカードを交換して動詞3枚+時間1枚のセットを組みなおしたうえで、相談しながら未来想定シートを埋めていきます。

未来想定シートをある程度記入出来たら、再び地図が貼られた浴場に戻り、そのストーリーや実現手段を地図に落とし込んでいきました。

フィールドワーク
未来冒険ワークショップをもとに、もう1度街にでてフィールドワークを行いました。まずグループで田端銀座内で食事をしたのち、それぞれの時間軸・ストーリーに合った景色を見つけ、写真を撮影していきました。

風呂庭ワークショップ
フィールドワークから戻った各参加者は、たどったルートやその発見を地図上に記入した後、撮影した写真や事前に用意されたマテリアルを使ってコラージュ作品を作成していきました。未来冒険ワークショップをベースにしつつ、コラージュする中での気付きをもとに作品をアップデートしました。

コラージュ作品の発表
最後にコラージュ作品を1人ずつ発表していきました。3年後から100年後までさまざまなスケールの物語が展開し、それぞれについてどんな障壁があるのか?どうしたら実現できるのか?別の観点から見ることはできないか?など議論を行いました。



5. コラージュ作品
風呂庭ワークショップでは合計20を超える作品が提案されました。ここではその一部を紹介します。
①交わる×演じる×聴く×3年後
芸人を夢見る架空のキャラクターが田端銀座商店街の人達を巻き込みながら獅子奮迅。「演じる」「聞く」場所としてシャッター化した空き店舗やスーパーの一角を活用していくことで、「交わる」場所を増やし、街の景色を変えていくストーリー。

発表の後は、シャッターが閉まっている空き店舗で実際に使えそうなところはあるか、またある場所に複数の利用価値を見出したとき、その場所の使われ方や場所に対する愛着はどう変化するのだろう?といった議論がなされました。
②交わる×演じる×聴く×3年後
コラージュを作る中で街に「緑」が少ないことに注目。商店街の路肩で植物を栽培することで、緑を介して「作る」「助け合う」行為が生まれ、緑も街も再生されていく景色を制作した。





6. 今後の方向性
今回のワークショップについて、評価できる点、改善できる点は以下の通りです。
【評価できる点】 ・未来視点だからこそ、現実的過ぎる課題を持ち出さないで発散的に議論ができた。 ・コラージュなので地元の方たちの言語化されていない欲望を掘り出すことができた。「なんとなく良い!」という感情を集められた。 ・視覚的だからこそ、異なる世代間でも会話が促進された。 ・作品をベースに、「当たり前」だと思われている制度や風景に疑問を持つ機会になった。 ・地元の方々や区議さんから具体的な障壁やそれを超える方法を考える声がたくさん聞けた。
【改善できる点】 ・地図が貼られた空間を生かすには?空間的に見れば、もっと連鎖的に課題が見えていくようになったはず。 ・コラージュを作成する際の手がかりになるようなアイテムを増やす。メジャー/サイコロ/靴/計量器とか。 ・手が動かない人は多い。グループで作業してみる? ・もう1段階具体化する、深ぼるフェーズが必要だった ・発散的なコラージュのアイデアを敷衍して考えてみる、翻訳してみることで、より具体的な示唆につながる。
今回のワークショップは、課題解決型のアプローチでは見逃されるようなローカルな可能性を発散的に妄想していくワークショップシリーズのプロトタイプとして開催しました。
今後はコラージュ以外の手法を用いてさらに質の高いワークショップ手法の開発を行いつつ、23区内各地で自治体と連携したワークショップを開催していきます。またそこから得られた発見・洞察を、若者のプロジェクトや事業まで発展させることに挑戦していきます。
参加いただいた皆様、ありがとうございました!
