
上馬・駒沢の地域花札でまちを考えるワークショップ|ASIBA
ワークショップの概要
本ワークショップは、若者が多く住む街の中で、どうすれば若者と地域住民とのコミュニケーションギャップを埋められるか、という問いから始まりました。
世田谷区は多くの大学が所在し、20〜30代の若年層の居住率が高い地域です。その中で上馬・駒沢エリアは、ゆるやかな坂道や緑道のある豊かな住宅地と、学生が多く行き交う駒澤大学が立地しています。世田谷区の運営する上馬まちづくりセンターでは、これまでも防災すごろくや防災なぞときなど、子どもから大人まで多世代で参加できるツールを活用して地域交流の機会をつくってきました。しかし、20・30代の若者の町内会やまちづくり活動への参画率は依然として低い現状があります。
こうした状況を踏まえ、私たちは「花札」と「画像生成AI」を組み合わせた、遊びながらコミュニケーションが生まれる新しい対話型ワークショップを企画しました。
花札は幅広い世代に親しまれており、共通言語としてのポテンシャルがあります。本ワークショップでは、伝統的な花札の絵札構成をモチーフに、上馬の風景をテーマとした「地域花札」を参加者自身がつくることを目指しました。
参加者は街歩きを通して、上馬・駒沢のなかに潜む日常の風景や記憶、季節の気配などを写真に収めつつ、その場所の思い出や感じたことを音声で吹き込みます。その後、撮影した写真をもとに、吹き込まれた音声を分析したAIが生成する上馬の地域花札をもとに議論を重ね、そこに物語や意味を付与していきます。
こうして、AIが生み出したイメージを媒介にしながら、
- 自分たちの住む街の「らしさ」を再発見
- 世代や立場を超えて語り合う場を形成
- 上馬の地域花札としてまとめる
という流れを通じ、多世代が共に自分の住む街について考え、議論するプロセスを設計しました。 なお、今回はあくまでトライアルのミニワークショップとして、普段からテクノロジーに親しみのある若い世代に絞って開催しました。
ワークショップ手法について
ワークショップは次の3つのステップを設計しました。 ・「パターン」をもとに街を探索する ・パターンと特徴から良い/悪い風景を生成する ・ 生成された絵札を組み合わせてストーリーと役をつくる
① パターンをもとに街を探索する
まず、上馬・駒沢の特徴をとらえる手がかりとして、クリストファー・アレグザンダーの「パタン・ランゲージ」の考え方を引用しました。参加者は「通り抜けできる路地」「道端の植栽」「人が立ち止まるカフェ前」など、日常の中にある特徴的な風景を観察し、それぞれの場所で「なぜ印象に残るのか」「どんな生活が想像できるか」をワークショップ用のアプリに吹き込みました。
②パターンと街の特徴から、ありそうな良し悪しの風景を生成する
まちあるきで吹き込まれた音声を文字起こしし、AIがグループごとに各グループの捉えた街の特徴を分析し、画像生成のためのプロンプトを作成しました。 たとえば、「緑豊かな隠れ家的なカフェ」「自然豊かに遊べる場所」「街路樹や木々の滲み出しが道の緑を形作っている」「斜めの電信柱」といった具象的な語りをもとに、以下の指示から
- 理想的な(Good)風景
- 失われつつある/望ましくない(Bad)風景
の2軸で生成を行い、計4種類の画像(original×1・Good×2・Bad×1)を生成しました。

③ 生成された絵札を組み合わせて、ストーリーと役をつくる
生成された画像と、実際のまちあるきで撮影された写真を組み合わせ、「パタン・ランゲージ」に基づく12のパターンごとに地域花札の絵札を制作しました。 花札には、「猪鹿蝶」「赤短・青短」など季節の特徴をとらえた役がいくつかあります。それに倣い、参加者は絵札を並べながら、
- その風景にまつわる生活のイメージ
- そこに潜む人の行動や記憶
- 街の変化や未来への願い を語り合い、最終的に複数枚の絵札をひとつの役として構成し、発表しました。
この「役」づくりを通じて、上馬・駒沢のパターンを、ひとつのストーリーラインに落とし込むことを試みました。
当日の様子
各班でパターンとルートの選定


街歩き



パターン写真の選定と共有

AI生成:風景の「良し悪し」を可視化する

ストーリーづくり:絵札を重ねてまちを語る

ストーリー発表:上馬の花札をめくる

今後の展望
今回のワークショップを通じて、パターンと紐付けながら街を歩くことで、普段は見過ごしてしまう細やかな場所や関係性に気づき、それらを「まちの構成要素」として再認識することができました。 また、参加者それぞれの関心や語りがAIプロンプトとして反映されることで、街の変化や見え方そのものが更新されていった点も印象的でした。 言葉→プロンプト→画像→ストーリーというプロセスを通して、 参加者同士の視点が少しずつ混ざり合い、AIを介した共創的な街の語りが生まれました。
参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。