ASIBA
Towards Creative Entrepreneurship,|ASIBA

Towards Creative Entrepreneurship,|ASIBA

一般社団法人ASIBA 共同代表の森原です。本日は、まず私から、ASIBAが掲げている「Creative Entrepreneurship」について、その背景と必要性をお話しさせていただきます。

私たちは、社会や組織の枠組みだけでは捉えきれないほど課題が多元化・複雑化する現代において、個人の創造性と主体性を起点に、社会的な問いに応答する実践が求められていると考えています。そして、建築・デザイン・アートといったクリエイティブ領域においてこそ、そうした実践が生まれる可能性を秘めていると確信し、これまで教育プログラムや事業開発を通じてその土壌を育んできました。

「Creative Entrepreneurship」とは、自ら問いを立て、社会との接点を構築し、具体的な行動を通じて新たな選択肢を提示していく姿勢を指します。これまでの領域の区切り方にとらわれず、既存の枠に収まらない活動を許容し、肯定すること。経済性や事業成長といった合理性の中でも、クリエイションや個人の主体性を抑え込むことなく「つくること」に挑み続けること。そして、まだどこにもないものを作ろうとすることへの社会的な信頼や期待をもう1度取り戻すこと。この言葉が、そういった社会を実現していくための合言葉になってほしいと願っています。

今日は皆さんへの近況報告とともに、お手元のカードを使いながらワークショップも行っていきます。その前に、私たちが考える「クリエイティブ・アントレプレナーシップ」や、事業を運営する中で気づいたこと、そして「これは本当にやるべきだ」と感じていることについて、少しだけお話しさせてください。

自己紹介

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改めて、森原正希と申します。東京都で生まれ、早稲田大学建築学科を卒業しました。在学中にNPO法人で事務局長を務めた後、デザインファームやスタートアップ、設計事務所など5社ほどを経験し、その傍らで建築史系の中谷礼仁研究室に在籍。研究室が主催していた共同研究会で二瓶と出会い、共にASIBAを立ち上げました。

ASIBAは当初、大学の空き会議室やスペースをお借りて、建築系の学生向けのインキュベーションやワークショップを自主ゼミ的に開催するところからスタートしました。これが約1年半前のことです。その後、インキュベーションプログラムの第2期を自主開催し、今年で第3期を開催しました。

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23歳でASIBAを始めてから、実に多くの発見がありました。特に、関わってくれた若い方々と話す中で、「クリエイティブとは何か」「建築やデザイン、アートは、これからどのように社会と接続していくべきか」「建築家とはどんな社会的な役割を今後果たして行くべきか?」といった問いを深く考えるようになりました。今日はその実践の中で生まれた、気づきの一部をご紹介させてください。

問いと実践の往復から生まれる「つくること」

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まず1つ目の気づきは、「問いと実践を往復して『つくる』とは何か?」という点です。

世の中には社会課題解決や、既存の課題をどう解決するかという話が多く存在しますし、多くの企業や行政組織は顕在化したそれらに対して、資本や人材を投下して解決を目指しています。

しかし、私たちASIBAが取るアプローチは少し異なっていました。ASIBAに参加する多くの若者は、実際は社会課題や意義ではなく、内発的な動機や「つくりたい」という強い思いが先行していました。彼らが何かを「つくる」「つくりたいこと」は実に素晴らしいことですが、それがどのように社会や世界と繋がっていくべきなのか。あるいは逆に、社会や世界について知った上で、そこから始まる新たな「つくる」行為は本当に存在するのか、といったことを考えるようになりました。

私たちのインキュベーションプログラムに参加する若手・学生は、最初は何をすべきか、何を作りたいのか、自分自身で自分が分からない状態からスタートします。まるで、一人で突然暗闇の草原の中にいるような状況です。そのままでは怖くてうずくまってしまうでしょう。しかし、そこに少しでも手がかりがあれば、「自分で立ちあがってみよう」「考えてみよう」「探索をしてみよう」と思うようになります。そうして地面を触り、暗闇に慣れ、星空を見つけ、風の流れを理解し、知って行く中で暗闇の中でも、少しずつ自らの「問い」が見えてくるのです。

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その問いが広がり、妄想し、面白いと感じるものを見つけ、実際に実践してみることで、それがだんだんと形になり、周囲の空間がよりクリアにリアリティを持って見えてきます。さらに一度「つくる」ことを通じて、それらは確固たるものとなり、社会に近づいていく。歩みを進めることができるのです。そして、その実践を通じて問いがさらに拡張されていく、という連鎖的段階へと進んでいきます。

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そこから問いは加速し、やがて個人から社会、そして世界へ…と探求の歩みを進めていくと私たちは考えています。最終的には、自分自身が「この方向性で物を作りたい」「この方向性で世の中を変えたい」という明確な意志を持つようになり、ものづくりから始まりながらも、社会や世界のあり方に対して自らの違和感をもって、ものを作れるようになるでしょう。これは、自分自身を忘れずに社会や世界と繋がっていく状態であり、自分と社会、世界が一気通貫で繋がっていくような感覚です。自分が生きることの延長線上に社会と世界が存在し、そこに新たな可能性が立ち上がってくる状態だと言えます。外から見ると、「あの人がこれをやっているのはこのためで、だからこれを作っているのだ」という一貫性が見えてくるはずです。

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しかし、世の中には目的と手段が逆転しているケースが少なくありません。意義が先行してしまい、個人の好奇心や内発的な動機が薄れ、仕事のために仕事をしたり、技術のために技術を作ったりと、本来の目的から乖離している状況が多いように感じています。技術開発や社会課題解決、あるいは建築や都市を作ることが目的化してしまったり、スタートアップであれば「エグジットすること」や「イノベーションを起こすこと」だけが重要視され、「何のために?」「誰がやりたいのか?」という本質的な問いが忘れられがちです。

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私たちはASIBAを通じて、個人の主体性を取り戻し、「何のためにモノを作っているのか」という目的をもう1度見つめ直したい、そのような社会の「つくる」のあり方に立ち返るべきと考えています。若者はもちろんですが、ASIBAに関わっていただいている皆さん全員と一緒に、「皆さんの主体性はどこにありますか?」「何を作ってみたいですか?」といった問いを一緒に考えていきたいのです。

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創造性の特権性を問い直す

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もう1つの気づきは、「創造性・クリエイションは特権性が高いのではないか」という点です。これは私個人のバックグラウンドにも関係します。

私は東京で生まれ、小学1年生の頃からクラブチームでサッカーに打ち込み、全国優勝も経験しました。中高一貫校に進み、あまり授業には出ませんでしたが、それが許される、自由でのびのびとした家庭環境でした。その後、私立の大学で建築を学び、その環境を享受し、夢中になり、「建築家になりたい」「大きな建築を作りたい」と純粋に思っていました。

しかし、コロナ禍によって家庭環境が厳しくなり、「自分でもなんとか働かなければならない」という状況に直面しました。その時、持っているスキルをすべて使ってでも生き延びよう、生き延びないと自由で創造的な環境を獲得できないのだと痛感しました。隣で自由に、潤沢な材料を用いて設計課題を行い、クオリティの高いものを出している友人たちを見て悔しくなりながらも、それでも社会に希望を見出そうとして、何とかして自分なりに仕事を生み出そうと必死だったのです。それが20歳の時でした。

当時の私は非常に不安と悔しさを感じていました。せめてもの反抗と意思として、やりたくない事はやりたくない、自分が志す領域でどうにか稼ぎたいと考え、自分で自分を一人で売り込む日々でした。それでもたかが20歳の若者に発注できる建築やデザインの仕事など多くはありません。ゆえに「月5万円も稼げない」という困窮した状況でした。そのような状況で、先ほど話したような「暗闇の中で自分で立とう」とは、とても思えませんでした。そのような環境では、ただひたすら体力の限界まで働き続け、ギリギリで大学に行き、卒業を目指す事以外、当時の自分にはできなかったのです。

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しかし、そんな状況の中でも、動き続けると色々な現象が起こります。私は3人の(いまでは師匠だなと思えるような)自分を純粋に応援してくださる大人と出会うことができました。彼らは私を応援し、肯定し、時に叱られながらも、身の丈には合わないようなチャレンジングな仕事に携わらせてもらい、きっと教育コストの方が大きかっただろうと思いますが、自分の問いに真っ直ぐに生きていく為のサポートをもらいました。彼らが「大丈夫」「なんとかなる」「できるようになるよ」と言ってくれたからこそ、自分でやってみよう、何かを始めてみよう、企ててみようと能動的に思えたのです。クリエイションはそうした支援や環境から始まることもあるのだと実感しました。

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だからこそ、創造性は努力だけで発揮できるものではないし、今でも決して誰もが平等に創造性を発揮できる状態にあるとは言えないと思っています。創造的であること。そんなものは、余暇と余裕ある人がやる、浮世離れしたものだと言う人ももちろんいます。

私たちが大切にしているのは、私たち自身も「問いと実践」を繰り返し、非常に面白いものを作りたい、スタートアップを作りたい、もっと様々なクリエイションに挑戦したいという思いがある一方で、それはこれまでの業界の発展の上にあること。そして先人たちの歴史の上に成り立っているという認識観です。業界が発達し、歴史が紡がれているからこそ、私たちのように自由に模型やデザインを作ったり、コンペに出したりができるような環境なのです。そのような現実を忘れながら何かを作ることはできないし、あらゆる職務を行う人たちへのリスペクトの上に創造性はあると、私たちは考えています。

だからこそ、私たちだけではなく、領域全体を育てて、人を育て、文化のバトンを繋いでいきたい。と思っていますし、同時に私たち自身もモノを作りたいと思っています。この両立は非常に難しく決して合理的な判断ではないことを理解していますが、それらを無視して、スタートアップや事業、デザインなど創造的な行為をすることはできないと思っています。

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「〇〇の民主化」や「開かれた〇〇」といった言葉が使われる前に、まず「人が創造的であること」の障壁をできる限り最小限にし、創造性を包摂していくこと。が、私たちASIBAのもう1つの重要なミッションだと考えています。

Creative Entrepreneurshipの可能性

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最後に、「クリエイティブ」と「アントレプレナーシップ」についてお話しします。

最初は、この2つの言葉を組み合わせたら面白そうだ、と単純に思っていただけなのですが、深く考えてみると、経済的合理性や説明可能性だけでは突破できない領域がこの言葉の先にはきっとあるはずだと考えるようになりました。

「面白いね」「説明は難しいけれど、やってみた方がいいよね」と言われるが形にならないモノがこの世の中には沢山あります。それらを埋没させることなく、どうすればすぐさまに形にできるのでしょうか。その問いの答えは、クリエイティブアントレプレナーシップという言葉の先にあるかもしれません。

少し分解して考えてみましょう。アントレプレナーシップという言葉を考える時、私たちは「私がこうしたい」「社会がこのように変化してほしい」という願望や、好奇心から始まる問いや実践、そしてその上でリスクとリーダーシップを取ることを指すのではないかと考えています。

アントレプレナーシップには、シリアルアントレプレナーシップ、ソーシャルアントレプレナーシップ、イントレプレナーシップなど様々な種類がありますが、これに「クリエイション」を掛け合わせたらどうなるでしょうか。実際にはまだそんな言葉はありませんが、「Creative Entrepreneurship」という言葉がどのような意味、意義、そして可能性を秘めているのか、言葉の定義から考えてみたいのです。

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私たちが「クリエイティブ」という言葉をあえて使っているのは、私たちの多くが建築学のバックグラウンドを持ちながらも、建築だけで解決できることが非常に少なくなってきていると感じているからです。だからこそ、デザイン、アート、サイエンス、エンジニアリングといった「つくる」の領域を横断しながら、既存の型や分類にとらわれずに自分の方向性を見つけていくこと。そして、人々を繋げ、アイデアを共有しながら共感性を獲得し、社会に新たな動きや連帯を生み出すこと。これらすべてを含めて「クリエイティブ」だと考えています。

私自身、建築も経験し、スタートアップで働いた経験もありますが、この2つの領域は大きく離れているし、性質としても異なっています。しかし、あえてこの2つを結びつけることで何かが生まれるはずだと信じていますし、そこにASIBAの活動への社会からの新たな共感性があるのではないかと感じています。

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少し話は逸れますが、例えばかつて、ウィリアム・モリスが始めたアーツ・アンド・クラフツ運動がありました。産業革命のあと、職人の好奇心やものづくりの楽しさが社会に接続されるような世の中を目指して、彼はレッドハウスという拠点を作り、そこに職人を呼び寄せ、様々なクリエイションを行いました。しかし、実際には資本主義とは大きく乖離していき、個人の趣味的なクリエイションに落ち着いてしまい、モリスが本来目指したような、「モノに込めた個人のビジョンや未来の思考が社会の主流となる」世界は実現できませんでした。

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しかし、産業革命の時代はそうだったかもしれませんが、現代では、クリエイティブ領域がスタートアップやプロジェクト創出といった領域と結びつくことで、ビジョナリーな考えがモノに内包された価値やサービスが市場に流通したり、クリエイションの面白さが世の中に浸透したりする可能性があると考えています。

現在のJカーブやスケール主義、マーケットファーストなビジネスモデルにはどうしても社会的な限界性があるはずで、私たちはクリエイションを尊重し、さらには信頼され、それが現実の形となって市場に流通していくことが可能だと信じています。だからこそ、私たちはあえて現在ら離れているスタートアップと掛け合わせるという挑戦をしていますし、これからもそれらが掛け合わさる社会を目指して、続けていくつもりです。


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「Creative Entrepreneurship」には様々な見方があると思います。本日お集まりの方の中には、起業家の方々もいれば、ゼネコン、デベロッパー領域の方々もいらっしゃると思いますが、1つの側面として、アートやデザイン、建築といった、これまでの区切りでは言葉にならなかった、簡単に表すことのできない活動を許容し、肯定していくための言葉になってほしいという願いがあります。

もう1つは、経済性や事業成長といった合理性の中でも、クリエイションや個人の主体性を抑え込むことなく「つくること」に挑めるような、新しい合言葉になってほしいと思っています。

そして最後は、「創造的であること」や「まだどこにもないものを作ろうとすること」に対して、なかなか「いいね」と言いづらい風潮の中で、そこに「いいね」と言えるような、クリエイティブに対する何かしらの信頼を取り戻す言葉になってほしいと願っています。

私たち自身、まだ経験も浅く、20代半ばの若者ばかりですので、この言葉がどのような意味を持つのか分かりませんし、あるいは非現実的だというご意見もあるかもしれません。しかし、私たちはこの言葉に大きな可能性を感じています。本日のイベントで、この言葉について一緒に考えていけることを楽しみにしています。

============= この記事は「ASIBA ATLAS #03 Creative Means More」にて、一般社団法人ASIBA共同代表の森原が「Creative Entrepreneurship」について説明したピッチを文字起こししたものです。

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現在ASIBAはクラウドファンディングに挑戦しています。この記事に共感していただいた方は、「Creative Entrepreneurship」の最前線で挑戦しているインキュベーション3期生の挑戦を、ぜひご支援ください。

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